2016年06月08日

「夏の不思議なでき事」/「カッパの楽園の一大事」

KEITA(小5)
第1章「夏の不思議なでき事」

 ある年の夏。小学五年生の一学期を終えたユウキが学校の帰りに近くの熊野寺神社に友達のワタルといっしょに遊びに行った。そこで神様の祭られている本殿でいっぱい遊んで、顔がきたなくなって手水に向かった。二人は手水に直接顔をつけた。だがその手水は特別なもので、二人が顔を上げた時には目の前にカッパがいた。そのカッパがユウキとワタルの手を取り、手水の中に引きずり込んだ。
 そうしたら二人は知らない変な池がいっぱいある空間に来てしまっていた。

「ここどこ?」
 とユウキはカッパに聞いた。するとカッパが
「ここはカッパの楽園だ。お前たちが神様の祭られている目の前で遊んでいたから罰を与える。」
「罰って?」
 とワタルがカッパに聞いた。
「水の中に一時間いる罰だ。」
「そんなの死んじゃうじゃん。」
 ユウキがカッパに言った。カッパが
「だったらカッパの楽園で十日間ずっと食事ぬきで働くかどっちかだ。」
 と言った。ワタルが
「そっちも死ぬじゃん。」
 と言った。
「あと一時間で罰を与える。それまでにどっちか選んどけ。」
 カッパはそう言ってろうやを去った。
 十分後。
「ねぇユウキ。」
「なにワタル。」
「罰を与えられたら死んじゃうからここを逃げない?」
「うん。そうしよう。」
 ユウキがそう言って、二人はろうやから逃げることにした。
 十五分後。
「ワタル、やっと床板をはずせたよ。」
「ナイス!」
 二人は床板をはずしてその下を通って逃げるつもりだ。二人は床下をほふく前進で進んだ。
 しばらく進んで外に出ると池がいくつも広がっていた。そこにはカッパがいっぱいいた。そんな所に一人の四年生くらいの少年がいて、近づいてきた。
「お兄ちゃん達名前は?」
「オレがユウキ。でこっちがワタル。お前は?」
「ぼくはソウタ。」
 小さな少年のソウタがそう言った。
「お前はここで何やってんの?」
 とワタルがソウタに聞いた。
「ぼくは手水で自分の顔をのぞいたら落ちてここに迷いこんじゃったの。」
「なぁ、お前ここからの出口知ってる?」
 とワタルがソウタに聞いた。
「知ってるよ!」
「じゃあ教えてくれよ。」
 とユウキが聞いた。
「いいよ。左から四番目の熊池の水の中を入っていって深い所に門がある。その門を開けて通れば熊野寺神社の手水に出られる。だが門に門番が三パいる。(パはカッパのいる数の単位)カッパを倒すにはそこら辺に生えているキュウリを行きたい方向と違う方向に投げればいい。」
「ありがとう。」
 ユウキが言った。ワタルが
「ソウタはいっしょに逃げないの?」
 と聞くと
「他にもカッパの楽園に迷い込む人を、あっちの世界に返さないといけないから。」
「うん。わかった。バイバイ。」
 ユウキはそう言って生えているキュウリをとって熊池に向かった。そこには深い池があった。他の犬池、猫池、猿池、鹿池は浅く池の底が見えるのに熊池は池の底が全然見えない。
「行こう。」
 ユウキが言って二人はもぐっていった。下にもぐって三十メートルぐらいしたら底が見えた。そこで門をさがすと門があった。そこにはカッパが五パいた。いつもより多かった。今持っているキュウリは四本。ワタルがキュウリを二本右に投げた。ユウキも右に二本キュウリを投げた。すると五パのカッパが投げた方に向かって泳いでいった。そこでワタルとユウキは門を開けた。そして熊野寺神社の手水に帰ってきた。
「帰ってきたんだ。」
「うん。」
 と言って二人は喜んだ。


第二章「カッパの楽園の一大事」

 「なんだあの二人の人間は。神社で遊んで手水で顔洗おうとしているぞ。」
 と熊野寺神社派のカッパのボスが手下に言っている。
「あの人間たちは自分がやっていることを分かっていない。ちょっとこらしめてやれ。」
「わかりました。」
 と手下が言って熊池に向かった。そして熊池の門番に
「人間二人をカッパの楽園に連れてきて、街の中心にある人間刑務所の一階の二号室にいれておけ。」
 と言って足早に去っていった。
 門番はユウキとワタルを二号室に連れて行ってボスカッパに伝えた。ボスカッパが二人に
「罰を与える。一つは水の中に一時間いるか、もう一つは十日間食事ぬきで働くかだ。一時間後に来るから良く考えておけ。」
 そう言い終わると大好物のキュウリを食べに一時間休憩に出かけた。
 一時間後、ボスカッパはいつも自然を破壊する人間を捕まえて、どのような罰にするか楽しみに考えながら手下と歩いていた。ところが二号室を見た瞬間驚いて倒れてしまった。なぜならそこにいるはずの人間二人がマジックのように消えていたからだ。ボズカッパは
「あのものすごく悪い人間を捕まえろ。絶対に逃がすな。」
 と言った。手下はあわてて指令室に向かって行った。ボスカッパはあせっていた。人間ならすぐに捕まえられるが、前に逃したここを知り尽くす人間に会ってしまうと見つけることができなくなってしまうからだ。自らも探したが出てこない。また悪い人間を逃したかと思い、非常に悔しかった。すると手下に
「門の中に入られてしまいました。あっちの世界に行くと見つけ出すのは不可能です。」
 と言われてもっと悔しくなった。これからはパトロールを一日一回三十分やろうと決めた。
「次は悪い人間を絶対に逃がすな。ここにいる一人も見つけ出せ。」
 ボスカッパは、発展のために自然を壊し、好き勝手に生きている人間が許せなかった。だから次の人間は絶対にこらしめるというより強い気持ちが心の底にあった。だからよりいっそう人間に対する警戒心が強いのかもしれない。



 今回紹介した作品は一つの出来事を二つの立場から書いた創作です。初めに紹介した「夏の不思議なでき事」は人間の側から書いたもので、当初はこの人間側から書いた物語で終わる予定でした。ところがKEITA君が作品完成の締め切り前に早々に書き終えてしまったので、実験的にかっぱの側から書くことをお願いしました。その時に書かれたのが「カッパの楽園の一大事」です。ひとつの出来事も立場が変われば、その見方も善悪の評価も大きく変わることを知って欲しかったのですが、見事にそのことを理解した上で書いてくれました。世界には多くの対立が続いています。私たちの日常においても同様です。子ども達には、物事をいろんな角度から捉え、想像力を働かせることができるようになってほしいと考えながら接しています。まだ小学五年生のKEITA君はそろそろその準備ができ始めているようで頼もしく思いました。

塾長


posted by 塾長 at 13:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。