2016年12月24日

返事はきっと……

MIYU(中1)

 四年前、私と君がまだ大学二年生だった頃。文学部(とは名ばかりの変人グループ)でクリスマス会の買い出しに二人で頼まれて行った時。君が、
「あっちを通って戻ろう!」
 そう言って私の手を引いて人の波の中を進んで行ったよね。君が思ったよりも速いから、私は何度も転びそうになって、
「待って!」
 って言おうとしたけど君のあまりにも無邪気な笑顔を見たら、なんだか胸がギュウッてなって、うるさかった雑音も消えて、世界の中で君と私の呼吸と、私と君の足音しか私の耳(こころ)に届かなくなった。
 気がつくと私は君と並んでジャングルジムの星の下(てっぺん)で街を見下ろしていた。駅前の大きなツリー、家の灯り、街中のイルミネーションが上(そら)の星よりも忙しく瞬いていた。
「僕さ…。」
「どうしたの?」
「笑うなよ。」
「笑わないよ。」
「サンタクロースになりたかったんだ。」
「どうして?」
「それは、ーーのーーー…。」
「えっ。なに?」
「きこえないよ?」
ねぇ……。

 ピッピッピッピピピピピピピジーージリリリリリリリリ…カチッ…。
「あと三分…。」
 またあの夢を見た。四年も経った今でも鮮明に思い出せる。ちらりと時計を見ると遅刻だった。
 ほぼ遅刻ならまだしも、遅刻だった。叫びたい衝動をこらえながら満員電車に体を押し込み、会社の最寄り駅から猛ダッシュする。
「お、お早うございます。」
 よかった。あの面倒なハゲの係長はいない。
「降夜!」
「げっ、お早うございます。係長。」
 ブチッ、あ、係長が切れた。
「おまえという奴は!会社に四十分も遅刻してくる奴がどこにいる!……」
 係長の怒鳴り声も聞く気がない私は夢の中で君が最後に言った言葉を思い出そうとしていた。君と見た景色も君の温かさも鮮明すぎるほど覚えているのに、君の最後の言葉は夜の精霊がいたずらに隠したように見付からない。
「ねぇ、雪!お昼いっしょに食べよう!」
 お昼休みに私のデスクに来たのは同期の桃山桜。大学サークルからの付き合いだ。
「いいよ。」
「桃山さん、降夜さん、ご一緒してもよろしいかしら。」
「菊長さん!もちろん!一緒に食べましょう!」
「まぁ、ありがとう。」
 話しかけてくださったのは会社の先輩の菊長さんだった。
 私達は会社から少し離れた定食屋に入るとおしゃべりを始めた。
「もう!ほんとにあのハゲ係長やめさせたい!」
「なにかあったの桃山さん?」
「あー、菊長さん、桜はいつもこんな感じなんで、ほっといていいですよ。」
「えー、雪、ひどくない!」
「べつに。」
「うふふ、二人は仲が良いのね。」
…昼休み終了十分前。
「やっば!遅れる!」
 
 夜十時、残業を片付ける。
「終った〜。」
 私の声が誰もいないオフィスに響く。私は肩にカバンをかけると夜のイルミネーションの海に身を沈めた。
 歩くうちに景色が四年前の道と重なる。ふと気づくとあの公園に来ていた。視線を上げるとジャングルジムと……。
 君がいた。
 あの日のように無邪気に笑って、君は、
「やっと、来た。」
 とつぶやいて、私を手招く。
 私は君の隣に座った。
 二人とも何も言わなかった。
 ただ空を見上げていた。
 フワリ、フワリ。
 雪が舞った。
「…ホワイトクリスマスだ……。」
 私はつぶやいた。

「あ、あのさ、目をつぶって手を前に出して。」
 少し上ずった声で君が言った。私は目をつぶって手を前に出す。
「えっと、そうじゃなくて手でお椀を作って。」

 ポスッ。

「目を開けて。」
 目を開ける。私の手の上には雪といっしょに降ったような小さな箱があった。
「えっと、貴方だけのサンタクロースになります!年中無休です!」
「……。」
「あっ、そのっ、僕と結婚を前提にお付き合いしてください!」
 嬉しすぎて理解が追いついてこない。私は笑って、




 ここで話は終わっていた。私は原稿をお父さんの机の上に置いて書斎を出た。
 きっとこれは、お父さんとお母さんの物語りだと思う。

 ピンポーン。
「はーい。」
「こんにちは雪音ちゃん。」
「お久しぶりです。桜さん、菊長さん。」
「失礼します。」


 あれは、お父さんとお母さんの物語り。
 きっと『降夜 雪』さんの返事はYesだと思う。





クリスマスシーズンに向けた創作をしてもらいました。
まずは冒頭の『私と君』のシーンがとても素敵で、読みながらあまりにも自分が素直に物語りに入って行けたことに驚きつつ、嬉しくなりました。先が読みたくなる書き出しに、上手くなったなぁと素直に感心しました。
また、親の世代にもどの世代にもキラキラする時間があったことを、さらっと書いてしまうところには、MIYUさんの精神的な成長が感じられます。自分自身が親世代となった僕の心にも響くものがありました。

塾長


posted by 塾長 at 14:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介

2016年12月08日

魔法の煙突

KOTARO.I(中3)

 僕の家には煙突がある。だが僕の家の煙突は普通じゃない。欲しいものを紙に書いて燃やすと、次の日暖炉にそれが届くという優れものだ。
 だがこの煙突に頼めば、なんでもかんでも出てくるわけではない。しっかりとルールがある。一つ目は、一日一個までである。二つ目は、お金や生き物は頼んでも届かないというものだ。そして、今日はこのことを自慢するために、親友のアホ田君を家に呼んだ。

「ピンポーン。」 
 とベルがなった。
「あっ来たかアホ田君。」
 と僕は言った。アホ田君が家にやって来た。
 僕はアホ田君にこのことを先に話すと危険なので、最初はゲームをして、アホ田君が帰る時になったら打ち明けようと決めた。
 アホ田君が帰る時が来てしまった。僕は煙突のことをアホ田君に打ち明けた。すると、アホ田君は何も言わずにペンと紙を取り出した。
「どうしたの?何か欲しい物でもあるの?」
 と僕はたずねた。
「だまれベンソン!」
 とアホ田君が言った。
「ぼくはベンソンじゃないよ、たけしだよ。」
 と言ったが、返答はなかった。書き終わるとアホ田君はその紙を燃やしてしまった。結局何を書いたか見ることはできなかった。

 次の日、僕は寝坊してしまった。起きると僕はすぐに家を飛び出した。学校に着くと、アホ田君に会った。
「昨日は何を頼んだの?」
 と僕は聞いた。
「秘密だよ。」
 とアホ田君が答えた。学校が終わると僕はすぐに家に向かった。普段は、アホ田君と帰っていたが、今日はそういう気分ではなかった。
 家に着くと、僕はすぐにアホ田君が何を頼んだか確かめるために暖炉に走っていった。走っていると足をすべらせ僕は頭を打ってしまった。
「ギャー。」
 と僕は声をあげた。しかし、あきらめるわけにはいかない。僕は激痛をがまんしながら床にはいつくばって暖炉へと移動した。
 暖炉に着くと、あるものが届いていた。
「ケーキだ。なんでだろう?」
 そこにはお誕生日おめでとうと書いてあった。僕の目から涙がこぼれた。
「今日僕の誕生日だ。」
 アホ田君が何を頼んだか分かった。

 その出来事からアホ田君とは大親友になった。この煙突の秘密は僕とアホ田君しかしらない。




 今回紹介したのは、煙突というキーワードを使っての創作です。この季節だけに、煙突とくればサンタクロースの話にすれば簡単なところを、KOTARO君はあえて別のアイディアで書いてくれました。

 さて、こういう便利な道具の話を書く場合、なんでもかんでも願いが叶うようにすると、いまひとつ現実味にかけてしまう面があるのですが、KOTARO君はあらかじめ、「一日一個まで。」「お金や生き物は頼んでも届かない。」とルールを決めることで、物語に安定感を与えることに成功しています。思いつきで書いているのでなく、書く前にきちんとアイディアを整理しているのが伝わってきます。だからと言って堅苦しい真面目過ぎる物語になることもなく、友人の名前がアホ田君だったり、「だまれベンソン!」「ぼくはベンソンじゃないよ、たけしだよ。」というようなやりとりがあったりと、どこかナンセンスな雰囲気さえ漂わせているところがKOTARO君ならではも持ち味です。おまけに最後にそのアホ田君がいい奴で読む人をジーンとさせるのですから、本当に自由自在に原稿用紙の上で楽しんでいるようでさえあります。書くときはいつもじっくり考えてから書き始める彼の作品は、毎回なんらかのアイディアを生かそうという試みが見えて、読んでいるこちらも楽しませてもらっています。

塾長

posted by 塾長 at 14:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。