2018年10月26日

今を生きる

YUKI(中3)

 自分は窓を正面に座っていた。
 窓には自分の体と原稿用紙、少し減ったコーヒーが映っている。今日の自分の服は黒をメインとした色が多く、よく見ないと腕より下が見えない。それほど、外はまだライトで明るい。

”自由が丘の駅前は暗くなることはあるのだろうか”

そんなことを思いながらコーヒーを飲んだ。
 外はいつもと変わらず少し騒がしそうに見えた。そう見えただけだ。音は聞こえない。もしかしたら外のパトカーはパトロール帰りではなく不審者の追跡をしていたかも知れないし、駅では何か事件が起きているかも知れない。そんな光景が想像できる。人が死に、辺りには濃い錆の臭いがある。周りの人間が殺されてゆき遂には自分も

「ガラッ。」

 と、コーヒーの氷同士がぶつかり音がした。自分は空想の世界から戻ってきた。

 今の日本は他の国と比べると良い方だと思う。身近に大きな争いはなく、今すぐに攻撃をしてくるようなことはないだろう。しかし、小さな争いが大きな争いへと変わり、日本全国、世界規模まで発展することだってある。この生活も明日には終わりを告げるかも知れない。だから今、この瞬間を大切に生きよう。僕は思う。





 電車の駅前が見下ろせるカフェの窓際の席に一人で座り、自由に感じたことを書いてもらった作文です。

 窓に映った自分の姿の描写に始まり、そこから外へと視線を移し、さらにそれに合わせるように主人公の思考も外の世界へと移っていきます。この時、読者の思考も内から外へと自然に移行していきます。よく計算された上で書かれた文章なのでしょう。ここは読んでいて楽しかったです。
 空想の中では身近に潜む危険への不安が語られます。そしてこの不穏な想像世界の話はどこまで行ってしまうのだろうと思ったところで、それを断ち切るかのような「ガラッ。」という氷の音。たった一つの音で、YUKI君は主人公と読者を現実世界へと引き戻してしまいます。何かが変わる瞬間というのは必ずあるわけですが、それを文章で書くのは難しいものです。その境目は目に見えるとは限らないからです。しかし、それがここでは実に上手く書かれていました。タイミングも音の選択もとても効果的で見事な一行でした。一行の重さや大切さを考えさせてくれる作品でした。素晴らしい!

塾長


posted by 塾長 at 13:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。