YUJIRO(小5)
ドアを開けたら
「うわぁ。」
猛烈な湿度がぼくをおそった。しかも空はすごく黒く、まるで怪物が空をおそったようだった。ぼくは今日もしかしたら悪いことが起きるような気がした。
そんな天気の中、ぼくは歩き出した。少し歩くとお店の中から冷たい風が来た。そのお店を見ると、ドアがなく、そのせいで冷たい風が来ることが分かった。そのお店を通りすぎるとまた猛烈な湿気を感じた。でもさっき部屋を出た時よりもあまり湿気を感じなかった。それはきっと外を歩いていて、その外の湿気に慣れてしまったからだろう。
その後もお店の前を通ると冷たい風が来て、涼しいなと思ったがお店を通りすぎるとまた湿気を感じたりした。今日ぼくはこの町の夏らしさを探していたが、冷たい風が来たり湿気が来たりして、不快だと思った。でもその不快さこそこの町の夏らしさだと思った。
部屋にもどる途中、空を見上げると、まだすごく黒く、今にも夕立が来そうな予感がした。だからぼくは急ぎ足で帰ることにした。
まだ厳しい暑さが残っていた八月下旬、僕たちは季節感について考えながら散歩をしました。当初、蝉の声や入道雲など、自然界に見られる一般的な夏の特徴をYUJIRO君は書くものと思っていたのですが、ぼくの予想は大きく外れることとなりました。
歩いている中でYUJIRO君が一番に感じ取ったのは、肌にまとわりつくような湿気でした。そして作文全体を通してその湿気を含んだ生暖かい空気とエアコンディショナーによる冷気が交互にやってくる様子を、この町の夏の空気として書いてくれました。当初の予想とは大きく異なる、自然とは真逆の人工的な空気感こそ、実は猛暑の東京そのもので、予定調和に終わらずに実際に感じ取ったものを言葉にしてくれたのは見事でした。この作文には今年の暑くて長い東京の夏がちゃんとあると思います。
塾長
2019年09月13日
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