SUMIRE(小6)
「趣味っていうか好きな映画とかってある?」
私がそう聞く。イオちゃんは、
「すみっこぐらし。」
と言って私の質問に答えてくれた。私が下に目をやると、小さな石が一つ転がっていた。私はそれを見て、三年前の自分を思い出した。
当時八才だった私は、作文教室に体験で来ていて、不安とはずかしさで目を下にやっていた。そんな私に、話しかけてくれたのは、レイちゃん。学校ではよくしゃべる子なのに、体験の時はいつもこうなってしまう。今では、作文のレッスンにも慣れ作文の友達ともよくしゃべる。
最後に、私からイオちゃんに言っておきたいことがある。今、不安だったり、はずかしかったりしても、少しすると、不安やはずかしさは取れるから焦らない方が良いよ。
当塾では、体験授業に初めて参加するお子さんがいる日には、いつも題材探しの散歩に出かけます。その際には先輩達が体験さんに声をかけ、質問するルールになっています。この作文はそんな散歩中の一コマです。
書き手のスミレさんが、体験で参加中のイオさんに声をかけた後、自分の足元に目をやり、その目線の動きから過去の記憶へと思いをはせる流れはとても滑らかで、上手になったなぁと感じました。そしてそれと同じくらい、この作文から伝わってくる優しさに嬉しくなりました。時々、人に対する優しさの大切さを子ども達にどうすれば伝えられるのかと悩んだりするのですが、今回の作文を読んでそれは杞憂だったと知りました。僕などが教えるまでもなく、子どもたちはその優しさをバトンのように繋いでいってくれるのかもしれません。もちろん全ての子ども達がそうだというわけではないかもしれませんが。
誰かが大変そうな時に、自分のことのように感じられる想像力がスミレさんの中で育っていること、そしてその想像力の側に優しさがあることが何よりも嬉しく、この仕事をやっていて良かったなぁと思わせてくれる作文でした。
塾長
2019年12月15日
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