2017年12月07日

あの頃の味

CHIKARA(高2)

 もう11月も後半。日に日に肌寒さが増し空気も冬っぽくなって来た。コートを羽織り、街を歩く人々は、ベンチに腰掛けた僕を羨ましそうに見つめていた。いや、僕が持っているおでんを見つめていたのだった。
 ふたを開けると、真っ白な湯気とともに、出汁のいい香りがふわっと漂ってきた。容器の中にはとても熱そうな大根が一切れプカプカと浮かんでいた。
 僕は急に懐かしい気持ちになった。小学生の頃、共働きの両親は帰りがいつも遅かったため、ほぼ毎日祖母の家へ遊びに行っていた。冬になると、祖母は、おやつの代わりによくおでんを出してくれた。出汁がよく染み込んだ熱々おでんはとてもおいしかった。
 おでんを食べるのは久しぶりだ。早く食べたくてしょうがない。大根を切ろうとすると、はしがスーッと入っていった。ホクホク熱々の大根は、あの頃と同じように、出汁がよく染み込んでいた。




寒い日に散歩をして、途中コンビニのおでんを一つだけ食べてみる、という課題に対して書かれた作文です。
日常のたわいもないワンシーンを、さりげなく、優しく、どこか懐かしい、素敵なワンシーンに変えてくれるCHIKARA君の文章力や話題の広げ方に感心しました。真っ白な湯気、出汁の香り、味、温度…こんな短い文章の中に五感をたっぷり使って書かれた文章からは、CHIKARA君の優しさや、豊かな感受性、彼の生い立ち、彼の持つ様々な要素が伝わってきます。おまけに「大根を切ろうとすると、はしがスーッと入っていった。」というように、おでんに対する繊細な描写も含まれ、彼の表現力の高さも感じられました。
読後、おでんを通して彼が書いてくれた、おばあさまの優しさや、その優しさをきちんと理解しながら成長した現在のCHIKARA君の人柄が、読んでいる僕の心に温かく染み込んできました。

塾長

posted by 塾長 at 13:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。