2020年06月24日

リレー作文「止まない雨」

起:SUMIRE(中1)
 僕の名前は高橋北斗。
つい先週、クラス替えがあって、仲の良い友達ともクラスが離れてしまい、何となくテンションが下がっていた。
そんな時、僕のテンションをあげようとしてくれたのか、虹が出た。

承:HARUTO H.(中1)
 「虹?」
 雨も降っていないのに虹が出る現象に僕は首を傾げた。そのことを話したくて見回すと、周りに同じクラスの人がいるがまだ友達でないため話しかけづらい。もし、それで変なやつだと思われたら今後友達になるのも気まずくなるだろし。
放課後、家路を急いでいると泣き声が聞こえてきた。聞こえてくる方を見てみると少女がいた。
「どうしたの。」
と、聞くと
「帽子が木にひっかかって取れないの。」
なるほど。木にひっかかっている帽子を取ってあげると
「ありがとう。」
そう言って帰っていったと思ったらまたもどってきてこう言った。
「あなたの心、泣いてるよ。」
そう言って今度はちゃんと帰っていった。
 泣いてる?何かにひっかかりながら僕は家に帰った。

転:KOKORO(中2)
 家に帰って少女が言ってたことを思い出した。 
「心が泣いてる。」 
その通りかもしれない。 
「あの日も、こんな不思議な虹がかっかてたな。」 
そう思い記憶を手繰り寄せた。 
「ほくとぉ!はやくぅ!」 
帽子を被った少女が手を振る。 
「ゆみ!待ってよぉ」
 僕は、走る。眩しい笑顔が、僕は、大好きだった。
 「、、、、あの日に、壊れたんだ。」
 怖くなって、考えるのをやめた。

結:KOTARO(大1)
放課後、真っ暗な曇り空で雷も鳴っていた。分厚い雲が町を飲み込んでいた。土砂降りの雨が校庭の土を無残にえぐっている。ボコボコになっていく校庭を、僕は教室の窓から彼女と眺めていた。
教室には、僕と由美の二人しかいない。激しい音を立てる雨が二人の会話を途切れさせていた。
いつも通り、僕たち二人の会話を始めるのは毎回由美からだった。
「世界の終わりに、二人でいるみたい」
「なんだよそれ」
「だって、もし世界に終わりが来るなら、きっとその時もこんな雨の日だよ」
由美は、立ち上がって教室の後ろの棚へと向かって行った。ランドセルを棚から出して、背負いながら笑って言った。
「帰ろう!」
「雨なのに?」
「雨だからだよ。私、好きだよ雨」
こうなったら、由美が話を聞かないということはよく分かっていた。言われるがまま、ランドセルを持って、由美の後に続いて行く。
今日は、雨だから学校に残っている子はほとんどいなかった。誰とも廊下をすれ違うこともなく僕たちは下駄箱まで降りて行った。
用務員のおじさんが下駄箱の前で、傘立ての修理をしていた。由美はなんてことないように話しかける。用務員さんは知ってる人だけど僕にはそんなことできない。
「おじさん。さようなら」
笑顔で由美がそういうとおじさんは少し心配したように言った。
「今帰るのかい?」
「うん。私雨好きだから」
「風は強くないけど、雨は沢山降っているから転ばないようにね」
「うん。じゃあ、さようなら!」
「はい。さようなら」
僕は何も言えないまま、由美に手を引かれて外に出た。僕たちは、二人で靄のかかった外を小さな傘を重ねて並びながら歩きだした。
外には、人がほとんど歩いておらず、けたたましい雨の音だけが僕らの間を埋めていた。由美はずっと雨の音を聞きながら、僕はそんな由美を見つめながら黙って帰り道を歩いていく。
なぜ、そうなるのか僕には不思議で、その時ももちろんだけど今思い出しても分からない。
「私、雨が好きなんだ。少し変わってるのかな」
由美がそう言って話を始めると、映画の世界の中みたいに雨は少しずつ止んでくる。もしかすると、不思議な力を持っていたのかもしれない。そんなわけないけど。
歩いて十分の帰り道、雨だからかは分からないけれど、いつもより長く時間がかかっていた。由美の話を聞いていて気づかなかったが、いつの間にか、雲は僕たちの町から少しずつ離れていっていた。
「いつの間にか晴れてたね」
そう言って傘を閉じるとそこにはいつもと違った町があった。
山間の小さな町、遠くに見える山は、オレンジがかっていて、空は紫と青のグラデーションが広がる。道の左側はオレンジ色で、橋の手前の駄菓子屋さんのアイスの箱がキラキラと反射している。僕たちは、優しいオレンジの世界を歩いていく。
「ねえねえ、すっごくきれい!」
由美の指さす先には、赤と青のやけに主調が激しい虹が川の間に掛かっていた。
握っていた手を離して、欄干に向かって走る由美。虹に向かって欄干から手を伸ばしたとき、僕の後ろから強烈な風が吹いた。
そこから先は、今の僕にはうまく思い出せない。
ただ、由美が橋から投げ出される直前。
由美が、赤いランドセルを背負ったまま、虹に向かって手を伸ばしている。
その体はまるで天使の様にふわりと体が宙に浮いている。
増水で汚れて暗い川と両側の白い壁に蔦が絡んだ家。
そして、川の上に架かる虹の橋。
そのすべてを、カラー写真の様に、虹を見ると思い出す。
きっと、雨上がりが怖いから、僕の心は小さな子に言われたように、
今でもずっと泣き止むことが出来ないのかもしれない。




UEDA塾のリレー作文では、予め決めてあるテーマに沿って、まず物語の始まり部分(起承転結の起)を全員で書き、一旦それを集めシャッフルし、他の人に配ります。つまり、起承転結の4つのパートを別の人が書き、バトンのように文章をつないで行き、一つの物語を作ります。

さて、オンライン授業を始めてから、なかなか実現できなかったリレー作文でしたが、今回は所属するクラス内だけでなく、全ての上級生クラスと創作クラスのメンバーの作品をシャッフルして行いました。これまで以上に自分とはタイプの違う人の文章を受けて、それに続けて書くこととなり、結果としてとても良い作品がいくつも生まれました。

今日紹介したのは中でもとても印象的だった一編です。
今回のテーマは「虹と帽子」。それぞれのパートの人がどこでどのように虹と帽子を物語に織り込むのか互いに探り合い、刺激し合いながら物語を進めていきました。

起で書かれた少し元気のなさそうな主人公に、承では初めて会った少女が意味ありげに「あなたの心、泣いているよ」と声を掛けます。転では主人公にどのようなつらい過去があったのか、その方向性が示されます。そして結ではそれまでの伏線が回収され、一気に核心へと迫っていきます。結まで読んだ時に、そこまでの3つのパートがどれも重要であったことがよく分かりました。
それぞれの担当が良いバトンをつないでくれたと思います。

今回の作品を読んだ印象は、悲しいのに美しい!
悲しい物語なのに、エンディングに向かうにしたがって、物語からイメージされる映像はどんどんカラフルになって行き、最後は1枚のカラー写真となって脳裏に焼き付けられました。

塾長



posted by 塾長 at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。