2020年08月26日

笑い声

SACHI(小6)

 「ピーンポーン。」
 インターホンが鳴る。
「はいはいはーい。」
 私はいすから飛び降りた。
「はいはいはいはい今行くよー。」
 インターホンの向こうのココちゃんにしゃべりかける。プールカバンをつかみ、
「ドドドド。」
 と階段をかけ下りた。ヘルメットをつけ、くつをはき、自転車のかぎを持ったところで、私は叫ぶ。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
 ママの声が返ってきた。ドアを開けると、むしむしした空気が私にまとわりつき、やりのような日差しを太陽が投げつける。自転車にまたがり、私たちは風になって坂を下った。

 プールに足をつける。
「冷たっ!」
「冷たい!」
 私とココちゃんは同時に声をあげた。
「全然温水じゃないじゃん。」
 そう思ったら、それが言葉になって私の口からすべり落ちる。
「そうだね。」
 とココちゃんは言って、プールの中に入った。
「冷たいっ!」
 と悲鳴をあげたあと、タンポポみたいな笑顔で
「これ入っちゃった方がいいよ!」
 と言うので、入る。やっぱり冷たい。ビート板の上に立って、口を開いた瞬間、私はプールの中に突き落とされた。プールから顔を出すとひまわりのような笑顔が見える。私も笑い出した。プールの開いた窓から、私たちの笑い声が風に乗って流れ出す。水しぶきが上がるプールの中で、私たちはいつまでも笑っていた。




「はいはいはーい。」「はいはいはいはい今行くよー。」と続くインターホンに対する返事だけで主人公の元気な様子が目に浮かびます。そして筆者は、主人公が椅子から飛び降り、階段を駆け下り、「行ってきます!」と一声叫んで飛び出していくまでの流れを書き終わる頃には、その元気さも含め、主人公がどんなキャラクターなのか読者に伝えてしまいました。さらには比喩「やりのような日差し」でこの夏の猛暑を表し、「私たちは風になって坂を下った。」ではスピード感まで表現しています。短い文章の中で次々と繰り出される印象的なフレーズが文章に勢いを与えていて、それがそのまま主人公の溌剌とした活力まで伝えてくれているように感じられます。コロナの閉塞感も御構い無しの小学六年生の夏だなぁと、思わず嬉しくなる書き出しでした。

後半は友達ココちゃんとのプールでのやり取り。冷たい水に入る時には「タンポポ」のようだったココちゃんの笑顔が、主人公がプールに落ちたところで「ひまわり」へと変わっていくのが面白く、筆者であるサチさん独自の感性を活かした比喩が読んでいて楽しいです。「プールの開いた窓から、私たちの笑い声が風に乗って流れ出す。」では幸福感が感じられると同時に、プールから外の世界への空間の広がりまで感じられました。
原稿用紙2枚弱の中にも、小学六年生の夏休み感がたっぷり詰まっていて、家に篭りがちの僕も、読んでいるうちに夏のワクワクした気持ちを思い出すことができました。

塾長





posted by 塾長 at 10:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。