2020年09月24日

秋の予兆

RINKA(小6)

 友達と別れた、一人の帰り道。足下を見てとぼとぼ歩く。
 つい昨日まで、猛暑みたいな日が続いていたのに、今日は冷たい風が足を通り抜ける。今まで身体を包んでいた温かいものが、風で流されていくようで背筋がゾクリとした。
 受験まであと、四ヶ月。急にそのリアルな数字が身近に感じた。
 視界の端に赤く染まった楓がひらりと落ちる。水色のワンピースもひらりと舞う。
 私はがむしゃらに坂を駆け下りていた。首筋がひやりとする。そこで自分が汗をかいていることに気付いた。
 ランドセルが重くて、すぐに息が切れる。
「はぁはぁ。」
 脳が酸素を求めて、息が荒くなった。息をするごとに冷たい空気がのどを通り抜ける。空を見上げると橙色に色づき始めていた。
 太陽が沈む時間が少しずつ、少しずつ早まっている気がする。世の中は確実に時を刻んでいる。私だけを残して、冬へ向かおうとしている。空を見上げたまま
「勉強しよう。」
 ぽろりと私はつぶやいた。
 未知なる世界が私を待っている。迎えに行こう暗闇に飲み込まれる前に。
 足を軽快にならしながら家路を急いだ。




『秋を見つけた』というテーマで書いてもらった作文です。
書き出しは、「足下を見てとぼとぼ」「冷たい風が足を通り抜ける」「身体を包んでいた温かいものが、風で流されていくようで背筋がゾクリ」など、どこか孤独で不安げな表現が続きます。そして、それらはその後の受験という言葉に見事で集約されます。不安とか寂しいとか、直接的に気持ちを表す言葉がないまま、上手に筆者の心情を表していています。一方でネガティブなまま終わらないのもこの作文の魅力です。重い空気の中にありながら、「赤く染まった楓がひらりと落ちる。水色のワンピースもひらりと舞う。」の部分は、ひらりという軽やかな言葉の連続でリズム感や動きを感じさせ、赤と水色という色も加わり、軽やかで明るい映像が浮かびます。さらに、後半では上を見て、勉強しようと呟き、最後には軽快な足取りを取り戻します。「未知なる世界が私を待っている。迎えに行こう暗闇に飲み込まれる前に。」と決意表明も力強く、筆者の気持ちの強さが感じられました。受験を数ヶ月後に控えた小学六年生の揺れる気持ちが表現された見事な作文でした。

塾長





posted by 塾長 at 17:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。