2019年06月19日

ペットボトルのゴミ

RIAN(小4)

 先生がゴミをいっぱい持っている。いっぱい持っているゴミは麦茶が入っていたペットボトルだ。大きい袋にいっぱい入っていて少し袋から出ていた。後ろを見ると、濃い影がはっきりとできていた。
 パン屋さんを通ると、少しおなかがすいてきた。パン屋さんを通りすぎるとゴミ箱があった。そのゴミ箱には、ゴミをすてないでくださいと書いてあった。そのゴミ箱は、しげんのゴミ箱だった。だからゴミはすてちゃいけない。ペットボトルを入れると、
「ガランゴロンガランゴロン。」
 という音がした。
 入れ終わると、パン屋さんの前をまた通ってコンビニに行く。コンビニにつくと中はすずしかった。アイスを選ぶ。ピノがあったからピノにした。ピノは箱にミニオンがいた。箱を開けると、中は黄色かった。いつもは黒なのにミニオンがいたからかもしれない。
 ピノを食べ始めてしばらくすると、ピノの表面が真っ白になっていた。ピノがあと二つになったから、ピノについているようじで二つピノをさした。全部ピノを食べると、ゴミ袋にピノの箱をすてた。
 木の葉を見ると、葉がすけていた。きれいな色だ。
 もうすぐ教室につく。とても暑かったから少しつかれた気がした。




今日は散歩に行くのではなく、教室にたまったペットボトルを資源回収ボックスに納めに行くという目的を持って出かけました。いつもは目的なしに歩くことが多いのですが、ちょっとした変化が作文にどう出るか興味津々です。すると、RIANさんは、袋にペットボトルが詰まっている様子に注目したり、ゴミ箱に見える場所が実はゴミを捨てる場所ではないということに気づいて、それに言及したりしてくれました。特に『ペットボトルを入れると「ガランゴロンガランゴロン。」という音がした。』という部分は印象的です。「捨てる」の代わりに「入れる」と書き、ちょっと楽しげな「ガランゴロンガランゴロン。」という音を加えているのです。そこには汚いゴミを捨てている雰囲気は感じられません。
もうひとつ印象的だったのは「後ろを見ると、濃い影がはっきりとできていた。」の部分です。実は教室を出る前に、今が時期的に夏至が近く夕方の割には太陽の光が強いこと、また光について描写したければ影について書くという方法もあるとうことについて話しました。RIANさんは早速そのことを作文の中に取り込んで表現しているのです。
その後も、ピノの箱のデザインの違い、ピノの表面の様子、光に透けた葉の色などなど、気づきの多い作文となりました。しっかりとした観察力が育ってきていますね。

塾長





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2019年05月30日

いつか絶対ぬかしてやる!

AMERI(小5)

「いちについてよーい。」
私の頭は一位になれるかという不安でいっぱいだ。一年生から三年生の時は自分よりも足が速い人がいなかった。だからあまり不安ではなかった。けど今年は自分よりも少し足が速い人が一レーンにいる。私はその人のことが気になって一レーンの方をちらっと見ようとした。でも実際には見る余裕は無かった。

 私は前を見た。
「バンッ。」
 私は後ろの足で地面をけっていきおいよく走り出した。
 私はまだ少し不安だった。でも走るのに集中していたから周りの人の声は全然聞こえなかった。自分の足音さえ聞こえなかった。
「あっ。」
 私の周りには誰もいないことに気づいた。私は今一位だ。私は少し不安じゃなくなった。だけど途中から一レーンの人が近づいてきているのを感じた。私はやばいと思った。だから腕を大きくふってさっきよりもスピードを出した。
 ゴールテープが見えてきた。でもだんだん一レーンの人が近よってきた。やばいもうすぐでぬかされそうだ。私はさっきよりも足を大きく開いて走ろうとした。でも抜かされてしまった。私は頑張ってまたその人をぬき返そうとした。私はゴールを見ながら、たまにその人のことを見た。
 まだ周りの音は聞こえなかった。私はゴールと一レーンの人のことしか考えてなかった。
 ゴールが近づいてきた。まぁ本当は自分が近づいているのだけど。なんて考えられないほど集中していた。
 やばいもうゴールだ。私は体を前の方にたおすようにゴールした。私とその人は、ほとんど同じタイミングでテープ(包帯)をきった。でもギリギリで負けてしまった。

 私は六年生の係りの人に二位の旗のところに連れて行かれた。私が一位の人を見ると、
「やばいマジで負けそうだった。」
 と言ってくれた。私はいつか絶対にその人のことをぬかしたいと思った。




 春の運動会シーズンとなりましたが、これは昨年の運動会のことを思い出しながら書いてくれたものです。
 実際に授業中に走る態勢になってみたり、実際に体を動かしたりしながら、丁寧に書いている様子が印象的でした。
 さて、徒競走というと長くても十数秒間程度のことなのですが、AMERIさんはスタート直前の心境から、ゴール直後までのことを細かく思い出しながら、原稿用紙二枚半程度の長さの作文にしてくれました。
 まずはスタート直前、結果のことを考えて不安になっている様子に共感できる方も多いでしょう。スタート直後からはすぐに走りに集中していくものの、そうした間にも実にいろんなことを考えていることがわかります。人間の脳は一瞬のうちに沢山のことを考えることができるものですね。不安、集中、期待と揺れ動く主人公の心情がよく描かれていました。惜しくも敗れた後も闘志が衰えないあたりに、悔しさとAMERIさんらしさが感じられました。短い時間を細分化することで、心の動きを詳しく描いた作文で、すぐそばでレースを見ているような気分になりました。

塾長





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2019年04月29日

もしも絵が上手だったら

NOA(高1)

 ゴールデンウィークが始まった。時間を無駄にしないために、早起きをすることにした。
「ピピピ、ピピピ。」
 目覚ましと共にパッと起きる。見慣れない物体が目に入る。黒い液晶タブレットが置いてあった。テーブルを埋め尽くすほどの大きさだ。起動してみる。すると、ラフ画が表示された。まだ七ヶ月しかイラストを練習していない自分のものとは思えなかった。
 しかし、不思議とこのイラストには親密さを覚えた。席に着き、タブレット用のペンを手にする。ペンをタブレットに当てた瞬間、無意識に体が動き始めた。イメージした通りに描ける。色付けも思い通りにできた。
 絵描きに没頭していると、親が起きた。そして母が自分の部屋に入り、イラストを見る。
「相変わらず凄いわね。これからも頑張ってね。」
「うん。」
 それだけ言い残し、母は上の階に上がった。と思ったら、一旦止まり僕に一言残した。
「ご飯もちゃんと食べなさい。」
 再び階段を上がる音が耳に残った。ぼくは何も言わずにまた、手を動かし始めた。




 実はこれは全てNOA君の妄想です。ゴールデンウィーク中に実現したい場面を妄想して自由に作文にしてくださいという課題に対して書かれた作文なのです。

 まるで実際に体験してきたのかと思うほど、自然に書かれています。これだけ実現イメージができていれば、NOA君の実現したい場面は、もはや妄想ではなくなり始めているのではないでしょうか。おそらく、これに近い生活リズムでこの連休を過ごしているでしょうし、近い将来、彼は実際に同じような体験をすることになると思います。
 今回の課題は、楽しみながら成功イメージを描くトレーニングをしてもらうつもりで出したものでしたので、この作文を見て、とても嬉しく思いました。彼は目標を見つけたことで、今ではゲームをする時間すらもったいないと感じるそうです。なんとも頼もしい男子になってきました。
 加えて僕が素敵だなと感じたのは、お母さんとのやりとりです。これもまた日々の中で実際にこういう会話が行われているのではないかと思うほどの自然な内容です。特に「ご飯もちゃんと食べなさい。」の一言には、自分自身が親である僕としては、言うよなぁ、こういうこと!と納得です。そしてそのセリフが出る親子関係そのものが素敵だなぁと思いました。きっとここに書かれている出来事は妄想でも、そこにある親子関係はすでに存在するのでしょう。
 目標に向かう主人公を応援したくなる作文でした。

塾長





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2019年04月28日

歳をとって

KOTARO.I.(高3)

 最近は、時が過ぎるのがあっという間な気がする。高校生になったあたりから、そう思うようになった。小学生の時は良くも悪くも、時が過ぎるのが長く感じたものだ。今日も桜を見て、もう一年も経ったのかと驚いたものだ。歳を重ねるごとに時間の感じ方が短くなっている。私はそれが悲しくもあり、不思議である。

 私は、生き物の寿命によって時間の感じ方が違うのではないかと思う。
 例えば、セミは成虫になってから七日間しか生きることができない。私たち人間からすると七日間はすぐであるが、セミの成虫はその七日間が一生である。要するに、セミには七日間が人間でいう百年間みたいに時間を感じているのではないのか。
 私はそういう生き物や年齢によって時間の感じ方が違うのが悲しくもあり、不思議でしょうがない。




少し前に桜を見に行った時の作文です。
読んでいるうちに、セミの成虫にとっての七日間は僕らが思うほど短いものではないのかもしれないという気になってきました。確かに星の一生に比べれば人間の一生など一瞬の時間だと言われますが、生きている当人たちにとっては、山あり谷ありドラマありのなかなかに長い時間であります。なるほど時間の長さや重さの評価は相対的なものなのかもしれません。なんとなく時間の秘密が分かってきた気がします。ということは、どんな短い時間でも、例えばたった一週間でも、それを自分の一生と思って必死に生きることができれば、何かの生き物の一生分と同じくらいの価値をそこに見いだせるかもしれません。この作文を読んだら、もっと時間を大切にしようと思うだけでなく、自分の残りの時間に、まだまだ大きな可能性があるような気がしてきました。ありがとう!ちょっと元気が出ました。

塾長



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2019年04月27日

カメレオン。

YUKA(高3)

僕はカメレオン。どんなものにもなれるよ。
ミュージシャンにだって、アイドルにだって、平凡なOLにだって、厳しい部長にだって、きっときっと、総理大臣にもなれる。
僕にはみんなの気持ちがわかる。想像できるんだ。その人を知って、どんな生活をしてるのかを知って、その気持ちを深く考えてみる。そうすれば、僕もその人になった気になって、いつしかそれが本当の自分だと錯覚し始めるんだ。でもね、また別のものが来たら、さっきのとはまた別物になっているんだ。そうして気付くんだ。本当の色を自分は知らないって。どれが本当の自分?みんな自分を持ってるよ?みんなはコンプレックスも、お気に入りも持っている。それを幸か不幸かというかはその人次第だ。でもね、コンプレックスもお気に入りに変えてる人達だっているんだ。じゃあ僕のコンプレックスはなんだろう?お気に入りはなんだろう?探してみよう!そうして見つかったのは、僕には何も色がないってこと。透明なカメレオンだってこと。この世界は平等を歌った嘘つきだ。平等なんて嘘つき。僕には個性なんてものはない。誰かの色を借りることしかできない。ああ、この世の全ての色が全て流れてくれればいいのに。そうすればみんな透明になるのに。そんな心から思ってもないことを言ってみたくなるほどに自分を見たくない。僕は僕と会いたくない。

ある日、あひるの彼がやってきた。そして僕に言ったんだ。「君だけは色を重ねることができるだろう?」って。
「でも全ての色を混ぜたら黒になってしまうよ?全ての色を掻き消してしまうじゃないか。」僕は不安になった。
「混ぜるんじゃない。君は今まで何度もいろんな色を上から重ねてきただろう?まだ君の中には何層ものいろんな色があるんだ。それは君が今まで大切にしてきたものさ。」
そして、僕は僕の尻尾の先を少しだけ、ほんの少しだけ切ってみたんだ。そしたらね……誰よりも沢山の色を持っていたよ。そう、僕はカメレオン。カメレオンなんだ。ねえ、君の色は何?








YUKAさんの文章を読むと、毎回新しいYUKAさんの本当の部分を少しだけ分けてもらったような気分になります。彼女が登場人物に話させる言葉は人の心の不安や弱さや、あまり日頃はペラペラとお話ししない部分まで踏み込んでくるからです。他人への憧れ、人の真似をすることの限界、コンプレックス等、多くの感情がこの作品の中でも描かれています。もちろんフィクションの形を取っているので、他の誰かを投影しているのかもしれないですが、僕にはYUKAさんの様々な要素が文章になって溢れ出てきているように思えるのです。今回の「カメレオン。」は実はYUKAさんが当塾を卒業する日にメールで送ってくれたものです。YUKAさんを送り出し、僕は帰宅途中の電車の中で読みました。電車に揺られながら静かに感動し、嬉しい気持ちに包まれたのを覚えています。何にでもなれるけど、まだ自分が何者か分からず不安になるカメレオンが、悩んだ末、最後には自分の良さを知り、それを自分自身で認めることができたからです。そしてYUKAさん自身がカメレオンだとしたら、教室での日々を通して、同じような感覚を持ってくれたのかもしれないと思えたからです。今でもこの作品を読むと、少し心が温かくなります。

塾長




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2019年04月26日

またね

GEN(小5)

 僕は一人で目の前の水そうをながめている。水そうの中には、金魚が四匹いる。ドキン、はくし、すいか、クキ、みんな楽しそうに泳いでいる。でも、本当は、もう一匹いた。

 お父さんが、金魚五匹を両手いっぱいにかかえた袋の中から、水そうの中に入れていた。金魚は水そうに入れられた後、中で元気よく泳いでいた。みんなうれしそうに泳いでいた。
「わ〜元気だな。」
 次の日は、昨日と同じくらい、とっても元気に泳いでいた。僕が、エサをあげようと思ったら、げんのすけが僕の所に、必死で泳いできて、エサをパクパク食べていた。かわいかった。
 異変に気付いたのは、その次の日の朝だった。なんだか、げんのすけが全然元気がなかった。僕は、ちょっと心配になってきた。
 その四時間後、僕が家に帰ってきたら、悲しそうにお母さんが、
「げんちゃん、金魚が死んじゃったの。」
 僕が水そうを見てみると、げんのすけが浮いていた。
 僕はずっと泣いた。
 それから、お父さんが帰ってきて、げんのすけを外に持っていった。その時、僕の家の前に住んでいる男の子が来て、
「どうしたの?」
 と聞いてきた。僕は、
「僕のお気に入りの金魚が死んじゃったんだ。」
 と答えた。そうしたら、
「残念だったね。」
 とその男の子は言った。
 お父さんが土をほった。金魚が土の上におかれた。そして、げんのすけは、ゆっくりと土にうめられた。僕は心の中で、
「またね。」
 と言った。

 僕は一人で目の前の水そうをながめている。水そうの中には、金魚が四匹いる。でも、僕の心の中には、今も五匹いる。




今回の作文では、現在のシーンから過去の回想に飛ぶ書き方に挑戦してくれました。冒頭と最後に書かれている場面が印象的で、今も水槽を眺めては、げんのすけ君を思い出しているGEN君の後ろ姿が目に浮かぶようです。また、げんのすけ君が元気な時の「僕が、エサをあげようと思ったら、げんのすけが僕の所に、必死で泳いできて、エサをパクパク食べていた。かわいかった。」という部分はとても素直で可愛らしい描写になっていて、GEN君がお気に入りの金魚との時間を楽しんでいた様子がよく伝わってきます。この楽しい時間が書かれていたからこそ、その後の悲しみが読む人に伝わりやすくなり、冒頭と最後の場面にはせつなさが加わったと思います。小さな家族のことを大切に思う、小学生の男の子の気持ちが上手に書かれた作文でした。

塾長




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2019年04月25日

ろうそく

SUMIRE(小6)

 「ハッピバースデートゥーユー…」
 ふと私はろうそくの火を見る。 
 今から六年前。私がまだ小学一年生になる少し前のこと。

 「九十一本ろうそく立てるの〜?」
 いとこのぜんが、おばあちゃんに聞く。
「さすがにそれは大変だから九本にしよっか。」
 私のひいおばあちゃんは九十一歳。でも、ひいおばあちゃんは九十一歳に見えないほど元気。杖だってついていない。私と一緒にお菓子だって食べてくれる。
「ひいおばあちゃん、お菓子食べよ〜。」
「分かった。今行くわね。」
 ひいおばあちゃんはすぐに私の元に来てくれる。
 誕生日から数日たった。お母さんの携帯に一通のメールが届いた。それは今日本当だったら来るはずのおばあちゃんが来られなくなったというメールだった。ひいおばあちゃんが風邪をひいたらしい。とたんに私はひいおばあちゃんが心配になった。年をとるにつれて、ちょっとの風邪が重病になってしまう。
 その日の夜、ふとんの中で私は心配していた。
「今何しているかな〜。熱あるのかな〜。」
 そんなことを考えているうちに、私は眠りに落ちた。

 「九十七本ろうそく立てるの〜?」
 いとこの花がそうおばあちゃんに聞く。
「さすがにそれは大変だから九本にしよっか。」
 パパが火を灯す。フォーン、フォーン、フォーン。
 今、ひいおばあちゃんはお菓子を食べない。けれど私が呼ぶとゆっくりだけど来てくれる。私はそれだけで嬉しかった。私は六年前のようにろうそくの火を見た。そして心の中で、心を込めて言った。元気でいてね、ひいおばあちゃん。




「今、ひいおばあちゃんはお菓子を食べない。けれど私が呼ぶとゆっくりだけど来てくれる。私はそれだけで嬉しかった。」
この部分を読んで僕が最初に感じたことは、自分が九十七歳まで生きられたとして、その時に、誰かが僕のことを呼んでくれるだろうか?たとえちょっとの用事だとしても、来て欲しいと思ってくれるだろうか?ということでした。そんなことを考えながら読み返して見ると、実はこの場面、曽祖母様にとってとても幸せな瞬間なのではないかと感じられました。同時に、愛するひ孫に呼ばれて、億劫ながらもよっこらしょと体を動かす時の曽祖母様の嬉しさや表情が思い浮かび、なんとも温かい気持ちになりました。人は誰でも年を取るにつれ、それまで当たり前にできていたことができなくなって行きます。そのことを実感できるだけの時間を生きて来て、ようやく僕が気づけることを、SUMIREさんは無意識であれ、すでに気づいているようです。でなければ、ただこちらに来てくれるだけの行為を嬉しいとは感じられないはずです。呼ぶ人も呼ばれる人も同時に一つの小さな幸せの中にいるこの場面を、そういう小さな幸せの形を、まだ小学六年生の筆者が見つけて書いてくれたことに、僕はちょっと感動しました。
もちろん、この作文はそれ以外にも多くの工夫が含まれています。ろうそくの炎という象徴的な光を主人公が想いを馳せる際のきっかけに使っていること。それをタイトルに選んだこと。六年前と今で変わったことと、変わらないことを描くことで、時間の流れを表現していること等々です。でも今回は、そういう技術的な進歩以上に、SUMIREさんの大切なことに気づける力に感心させられました。

塾長





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2019年03月29日

自分を好きになるために

KOTA(中3)

 卒業をした。二日前の事なのに喪失感が抜けない。私は学校が好きだったのだと気付く。
 でも、もう遅い事を、二日前には一輪も咲いていなかった桜が視覚を通して私にしっかりと教えてくる。
 満開には程遠いが、それでも少しずつ枝に付いた花は私の心の甘さを許そうとしない。強制的に心の奥に景色を焼き付け、さらに卒業した時の景色まで目の前に持って来る。
 一度目をそらす。しかし視線がまた桜に吸い寄せられてしまう。がっちりとした根元や幹は「逃げるな」と、また「お前はこれからどうするんだ」と言ってきた。
 私は理解する。桜の木は私だ。桜の声は私の心の声で、何も考えようとせず、何も動こうとしない私を、桜を通して自問自答させているだけなのだ。
 「桜の木のようになりたい」と私は言う。自分の心がその答えを求めていたのかは分からない。でも桜の声や卒業の時の景色はおさまった。
 私は歩く。卒業を養分として、満開が美しく、そして人々の目を奪えるような、とても濃い色の付いた桜の木になれるように。心に嘘をつかなくて済むように、自分が自分を好きでいられるように、私は桜のようになるために生きて行く。






中学卒業という一生に一度の出来事が、桜とともに、KOTA君の中の痛々しいくらいに純粋な感情をむき出しにさせているように思いました。だからと言って、ここに書かれている彼の覚悟は、決して卒業後という特別なひとときの思いつきではなく、この三年間を振り返る中で、自然に湧き出てきた素直な願いのようなものに見えます。自分の弱さを認めた上で、学校を好きだと確信できている事、また、自分の今後に希望を持って前に進んで行こうとしている事が読めたことを、嬉しく思います。時間をかけて、ゆっくりと、強さとしなやかさを併せ持つ樹になってほしいと思いました。

塾長



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2019年03月26日

初めての光景

YUYA(小5)

 「勝てるかなぁ。」「いやいや今まで勝ってきてるから大丈夫だ。」
 僕は心の中で僕自身と喋っている。
 今日は運動会当日。天気も良く、絶好の運動日和だった。
 僕は四年連続かけっこに勝っている。今年も勝つぞ!と気合いを入れてかけっこに臨んだ。
 そろそろ自分の番だ。ドキドキ心臓の音が奇妙なほどに聞こえてくる。
「バン。」
 ピストルの音が鳴った。僕は勢いよく走り出した。と思ったら、すべって少しスタートが遅れた。もうみんなはスタートしている。僕は焦った。
「やばい。やばい。」
 息をハーハーさせながらようやくテープが見えてきた。初めて相手の背中を見ながら走った。




2018年度の自分の三大ュースを挙げた後、そのうちのひとつについて、原稿一紙1枚程度にまとめるという課題に対して書かれた作文です。
簡潔にまとめられた作文ですが、短い中に工夫が見られて感心しました。例えば書き出しの場面では、不安だと書く代わりに自分自身との会話の内容を書き、さらには、緊張していると書く代わりに「どきどき心臓の音が奇妙なほどに聞こえてくる。」と書くなど、気持ちの表し方の工夫をしています。また最後の場面では、かけっこで負けてしまったことを「息をハーハーさせながらようやくテープが見えてきた。初めて相手の背中を見ながら走った。」と、自分が見た景色の描写だけで表現したことで、読んでいるこちらも同じ映像を思い浮かべながら、負けてしまった無念さを共有することができました。
短い文章ですが、随所に成長が感じられる作文でした。

塾長




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2019年03月15日

ぼくのミス

HARUKI(小6)

 「あと少し。」
 またミスった。神のテル君がいるが、一対0で押されている。敵は、カードのこっそり交換などをする疑いがある。そのようなことでぼくたちのジャマをしてくる。そのおかげで、テル君の十のセットが七とまちがえてなかなかそろわない。
 最終ターンで敵が六を引いてくれた。これで六が四枚そろった。しかし、テル君がまたミスして、七を引いてしまった。
 ぼくのターン。まず一枚目を引く。正解だった。そして二枚目を引く。まちがえた。六をさがして三枚目を引く。またまちがえた。ついに運命の四枚目…。なんと、ちがうカードだった。
 さらに、ぼくは、大ミスをしてしまった。ここでテル君に代わるところが、ぼくは、そのまま引いてしまった。そのおかげで負けてしまった。もし仮にここでテル君に代わっていたら、勝てていただろう。その後、テル君と少しケンカになった。
 テル君「なんで引いたんだよ。」
 自分「おまえ七引いてたじゃん。」
 ……
 でも実際にここでぼくが代わっていたら勝てていたから、ぼくのミスで負けたのだ。



この作文はトランプの神経衰弱をしているシーンを描いたものです。ただし当塾の神経衰弱はちょっと特殊でトランプ2セットを使って行います。ですから同じ数字が4枚揃って初めてポイントになるという過酷なルールなのです。4枚揃えるのはなかなか難しく、子どもたちはチーム内で協力しながら、少々ムキになるくらいの真剣さで取り組んでいるのです。
主人公HARUKI君のチームは1ポイントの劣勢ではあるものの、チームの最後のターンを前にどうやら六のカードの居場所を4枚分把握し、まさに同点のチャンスを迎えたあたりから作文は書かれています。

さて、今回この作文を紹介しようと思ったのは、この作文を授業の最後に音読した際、教室にちょっとした感動の空気が流れたからです。作文にもあるように神経衰弱を終えた段階では、HARUKI君とテル君のチームは気まずい雰囲気で終わっています。しかし、いざ作文を書き始めると、HARUKI君は冷静に負けた瞬間を描きつつ、その敗因は自分にあったと理解し、それを素直に文章にしてみせたのです。自分のミスを認めて、それを表明するという大人でも難しい行為を、作文の中で潔くやったことは脇で見ている僕にも驚きでしたし、ちょっとした清々しさを感じました。この作文を聞いていた短い時間にテル君の表情が見る見る変わっていったのも印象的でした。
HARUKI君自身、この作文で自分の落ち度を認めることで随分気持ちが軽くなったように見えました。2人はスッキリした顔で授業を終えました。
文章を書くことで心の整理をし、自分の心の中に鬱屈してしまいかねない思いを素直に文章にできたことは、これまでのHARUKI君にはなかったことで、この作文は単に神経衰弱の様子を書いただけではなく、HARUKI君の成長の瞬間の記録となりました。

塾長





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2019年02月03日

デイビス

KOTARO.I(高2)

 俺の名はデイビス。実は俺には人に言えない秘密がある。だから言うことはできない。しかし秘密は誰かに言うためにあると祖父のデイビジョンが言っていたので話そうと思う。
 俺は好きな時に鬼化することができる。鬼化とは角が生えたり、肌が赤くなったりすると言う残念な点があるが、身体能力が大幅に向上すると言う効果がある。この力を使って俺はライバルであるライアンを倒さなければならない。ライアンは俺と同じく鬼化の能力を持っている。ライアンは極悪人だ。だから倒さなければならない。今はライアンの住み家に向かっているところだ。

 「ピンポーン。」
 俺はライアンの家のベルを鳴らした。
「はーい。」
 家の中から声が聞こえた。ドアが開くと同時に俺は大声で言う。
「今日こそ貴様を倒す!」
「あらまぁ、デイビスちゃんじゃない!また遊びに来てくれたの?ありがとね。」
 ドアから出て来たのはライアンの母さんだった。どうやらさっきのは聞かれなかったらしい。俺は内心ほっとする。
「はい!ライアン君はいますか?」
「ライアンなら部屋に居ると思うわよ。どうぞ上がってください。」
「ありがとうございます。」

 俺は部屋に上がった。この瞬間からライアンとの戦いが始まる。お互いに鬼化して格闘技を行う。先に参ったと言うか気絶した方が負けだ。
「オリャー。」
「ギャー。」
「ウリャー。」
「キャー。」
 壮絶な戦いの末に俺はライアンに尻餅をつかせた。
「これで最後だ。ライアン!」
「それはどうかな。」
 ライアンはポケットから豆を取り出して食べるのかと思えば俺に投げつけた。
「何をする。」
 豆が俺の体に当たると同時に、力が抜けて鬼化が解けてしまった。
「今だ!」
 次の瞬間ライアンは俺の目の前から消えた。俺は顔に重い一撃をくらった。
 
 目が覚めると、俺はライアンのベッドで寝ていた。
「惜しかったなぁ、デイビス。」
「ちっ。また負けたか。」
「今回はちょっと危なかった。」
「貴様!何をしやがった!」
「それは秘密だ。」
「ちっ。明日こそは必ず勝つ。」
「それはどうかな。」
 今回は負けてしまったが、明日がある。ライアンを倒すまで俺の戦いは終わらない。俺は家に帰る途中大声で
「ライアン!いつか必ず貴様を倒すからな。」
 と言った。



節分ということで、鬼が出てくる短編を書いてくださいという課題に対して書かれた作品です。
てっきり怖い話かと思って読み始めれば、いきなり人に言えないはずの秘密をベラベラ語るし、敵のお母さんは良い人そうだし、どこかとぼけた語り口のKOTARO.Iワールド全開です。読みながら、どことなく漫画を読んでいるような感覚を覚えるのは僕だけでしょうか。互いに鬼化しているくせに豆を投げて鬼を倒すというあたり、節分が題材であることも考慮して上手にまとめてくれました。気楽に楽しく読める鬼の物語でした。

塾長


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2019年02月02日

試験のこころえ

KOTARO.Y(高2)

「寒っ…。」
朝起きて、一番初めに発せられた言葉。
ここ最近、毎日言っている。
今日も何の変哲もない普段通りの朝に見える。
いや、見えて欲しいという願望なのかもしれない。
はぁ…。
朝からため息が出る。フリースを羽織って、部屋を出てご飯を食べに下の階へ向かう。
ヨーグルトを食べてからパンを噛る。朝のニュースを聞き流しながらお茶を一口飲む。
ふと冷蔵庫に貼ってあるカレンダーが見えた。
『試験日』
赤い文字で書かれ花丸で目立つようになっているその日、今日だ。
はぁ…。
自然とまた、ため息が漏れた。
食器をシンクに置いて、自分の部屋に戻る。上に上がろうと階段を二、三段ゆっくりと上る。ふと足が止まり、壁にもたれかかって階段の上を眺める。
頭が、コツン…、と壁にぶつかった。
何でもないのに、急に泣きそうになった。
時間は、刻々と過ぎていく。
重たい足をどうにか上げて、一歩前に踏み出した。その勢いのまま階段をかけ上がった。
ドアを開けて部屋に入る。着替えて洗面所に向かう。歯を磨いているとき、ふと鏡を見た。正面には、不安そうな顔をした奴がいた。
クチュ、クチュ、クチュ…、口を濯いで、吐き出す。冷たい水で顔を洗い、顔をタオルで拭いて、引き締まった顔でもう一度鏡を見る。
そこにはやっぱり不安そうな顔をしてる奴が立っていた。
後ろを向いて、部屋のドアに手をかけた。何となくもう一度、鏡と向き合った。
やっぱり不安そうな奴がいる。
握りこぶしを作って、心臓を二回叩く。
ドン、ドン。
拳を正面に向け、向こう側と合わせる。
顔を上げると、正面には余裕そうな顔をした奴がいた。そいつに向けて、ちょっとイジワルそうに言った。
「せいぜい、頑張れよ」
部屋に入り、バックと携帯を持って部屋を出る。鏡はもう見なかった。
階段を駆け降りると、廊下に婆ちゃんが立っていた。
「何をそんな急いどんの。何か良いことでもあんのかい?」
「はぁ…。テストがあんの」
「あぁ、テストか」
「そうそう」
「まあ、楽しんできな」
「はぁ…。婆ちゃん、楽しいわけないじゃん」
「何、言ってんだい。あんたは、死ぬ訳じゃないんだし。せっかくやるなら楽しみな」
「ハイハイ。行ってきまーす。婆ちゃん鍵閉めといてー」
そう言って、玄関を開けて走り出した。

 電車に乗り込むと、周りには多くの学生がいる。皆、単語帳や教科書を開いて勉強している。鞄から単語帳を取り出して、最後の追い込みをかける。電車に揺られていると、段々と嫌な雰囲気を感じた。
お腹が痛い…。
電車に揺られながら便意に耐える。
あと、三駅…。
あと、二駅。
あと一駅。
駅に着くと勢いよく、ホームに飛び出して看板を見た。
(右だ。)
誰よりも早く、ホームを駆け抜けて、階段を登り、トイレに駆け込んだ。携帯と、にらみ合いながら、トイレを済ませる。しかし、なかなかすっきりしない。
下痢が続く。
段々と時間が過ぎていき、トイレを出た頃には、試験十五分前になっていた。
(ヤバい。ヤバい。)
走って試験会場に向かう。玄関の前に着くと、六十代くらいのおじさんが立っていた。
「大丈夫?走ってきたの?」
「はぁ、はぁ、はぁ…。大丈夫です」
「そこの階段上がって二階だから」
そう言ってドアを開けてくれた。頭を下げて中に入る。

 教室の扉を開けると、既に多くの受験生が座って、教科書や参考書、ノートなどを読み返していた。
「受験票を机の上に置いて、静かに待っていて下さい」
解答用紙と、問題用紙が配られる。
「それでは、始めてください」
一斉に、紙を捲る音が聞こえる。
まだ開かない。
目を瞑って、大きく深呼吸をする。
目を開けて問題用紙を見ると、婆ちゃんの言葉を思い出した。
「楽しんできな」
なんだか、面白くなって、つい、頬が緩んでニヤっと笑ってしまった。
一ページ目を捲る。

 楽しんだもん勝ちだ。



 受験シーズンまっただ中のこの時期、多くの子どもたちが不安と戦いながらも目標を達成するために、ドアを出て行きます。親としても、塾の講師としても、なんとも胃がキリキリする季節です。
 今回は、来年には自分自身が受験生となるKOTARO君にお願いして、受験生へのエールとなる作品を書いてもらいました。お願いしてからほぼ1時間で、さらさらと書き上げられた短編は、さすが現役高校生が書くだけあって、試験を目前にした心境や体調の変化がリアルに書かれています。でも、ただ大変なだけでなく、ちゃんと「楽しんだもの勝ちだよ」というメッセージも込められていて、素敵なエールにもなっています。厳しい時間の中にもちょっと温かさを感じられる作品で、多くの受験生に読んでもらいたいなぁと思いました。

塾長








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2018年12月28日

ばあばのお家はどうなっている?

SACHI(小4)

 「あと、もう少しでつく?」
 ここは新幹線の中。私は、さっきからこのことばっかり聞いている。(今度こそ)と思っていると、ママが、
「あと十分でつきますっていうアナウンスがもうすぐ流れると思うよ。だから、もうすぐつくよ。」
 と言ったので、私は思わず
「わーーーい!」
 とさけんだ。それから、さけんだ数秒後にあわてて口をおさえたけど後の祭りだった。その後ママに、ちょっぴり怒られてしまった。
 しばらくして、駅に着いた。外に出た瞬間、私は
「あっつーーー。」
 とさけんだ。そうしたらママが
「名古屋は暑いからねー。」
 と言う。私が、
「でも、おふろ楽しみー。どんなのかな?」
 と言うとママが、
「ばあば探さなきゃ、ばあば。」
 と言ったので、私は、ばあばを探すことにする。
 ようやくばあばが見つかってママと別れる時間になったけど、私は、
「バイバイ。」
 と言っただけで終わったので、ばあばが、
「そっけな。」
 と言った。私とママは思わず、ぷっとふきだしてしまった。

 それから、ばあばといっしょに、二回名古屋電鉄に乗って、有松駅で、じいじと待ち合わせをして、ばあばのお家に向かう。
 私は、(着いたら、手を洗うついでにおふろどうなってるか見〜よう。…やっぱりや〜めた。後でのお楽しみにしとこう。)なんてことを考えながら、お家に向かう。

 「着いたーー。」
 と私はさけんだ。そして、ばあばに
「早くかぎ開けて。早く、早く、早く。」
 と言ったら、ばあばに
「なんでそんなに急いでるの?そんなに急ぐなら、自分でかぎ開けて。ばあばは、荷物出すから。」
 と言われた。私は、ばあばに渡されたかぎを強くにぎりしめて、階段を一気にかけ上って、
「カチャッ…カチャッ。」
 という音を立てて、かぎを開けた。ドアを開けると、なつかしいあま〜い香りがただよってくる。私は、大きく息を吸って、だあれもいないリビングに向かって思いっきり
「ただいまーーー。」
 とさけんだ。そして上着をぬぎすてて、ソファに向かって飛び込んだ。
「ぽよーん。」
 という音と私の
「きもちーーーい。」
 という声が混ざった音がする。前より、やわらかくなったなあと思いながら、ソファを見ていた。後から教えてもらったことだけど、おふろ以外にも、コンロや、ソファも新しくしたらしい。そのことに、私は気づいていなかったから、びっくりした。





 夏休み明けに書いてもらったものですが、素敵な作品なので、遅くはなりましたが、今年のうちに紹介します。

まずお母さんと主人公の会話のテンポの良さが印象的でした。時には「でも、おふろ楽しみー。どんなのかな?」と聞く主人公に対してお母さんは「ばあば探さなきゃ、ばあば。」と返しているように、二人の会話がすれ違っているようにも見えます。でも逆に実際のやり取りの空気が良く伝わって来て、上手いなぁと思いました。また、お母さんとの別れの場面でのそっけなさには、読んでいる僕もいっしょに、プッと吹き出してしまいました。
後半では、主人公の生き生きとした様子が作文の魅力になっています。特に、誰もいないリビングに向かって「ただいまーーー。」とさけぶ場面は僕のお気にりの場面です。この時、おばあちゃんの家の香りを、懐かしい「甘い」香りと表現しているのにも感心しました。おばあちゃんの家に対する主人公の気持ちまでが伝わってくる素敵な表現ですね。
全編通じて、主人公の魅力が会話や動きを通して感じられる作品でした。これで四年生とは。末恐ろしいです。

塾長





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2018年12月23日

助けてサンタ!

YUKI(中3)、KOTARO.M(中3)、KOHAKU(中3)、OTO(中3)

< 起 >
 「ピッ。」
 改札でパスモをかざし、駅を出る。今年は暖かい日が多かったけど、さすがに12月にもなるとコートが手放せなくなる。
 駅の前ではクリスマスツリーが、飾られていた。

< 承 >
 俺はそのクリスマスツリーに近づいた。大きさはかなり大きくて、ライトアップされていて綺麗だった。周りにはたくさんのカップルがいた。俺には彼女がいなかったので胸が痛んだ。

< 転 >
 クリスマスの時期は毎年胸が痛む。六年間男子校の俺は、全くと言っていいほど女子に縁がない。たまに友達が「デートだ」と言って、俺は遊ぶのを断られる時がある。そんな時は一人で恋愛マンガを読んで妄想した。
 駅前のツリーを見て回っていた時だった。前の方から俺と同じように一人ぼっちで歩いている女の人がいた。あまりにも美人でつい俺は眺めてしまい、俺のハートは撃ち抜かれた。

< 結 >
 つい俺が見とれていると、彼女と目が合ってしまった。彼女がこっちに来る。
「やべっ。」
 俺は慌てて目をそらした。しかし、彼女は目を合わせてきた。
(あーせっかくのクリスマスに怒鳴られるなんてついてないよ。サンタさん助けて!)
「ねー君も一人?」
「へ?」
 怒鳴られると思っていた俺は、つい間の抜けた返事をしてしまった。
「君も一人なら一緒に回ろ。」
「あ、お願いします。」
 俺は彼女と大きなツリーを回ってイルミネーションを見た。
 一通り見終わったので、駅まで送ることにした。駅までの道で、俺はこの幸せの礼を天に向かって何度もした。
「じゃあね。」
「うん、バイバイ。」
 駅まで送ると、また一人になってしまった。
 帰り道、さっきまで気付かなかった寒さが、急に押し寄せてきた。でも、ホッカイロで温まらない奥の方が温められた。
 自分の部屋に帰って宵が過ぎる頃、
「やべ、LINE聞くの忘れた〜。」
 となるのを俺はまだ知らない。




クリスマスの心温まる物語を書いてください、という課題に対して、書かれたリレー作文です。この作品では、起と承をそれぞれ五分程度、転と結をそれぞれ十分程度という限られた時間の中で書いています。突然告げられた課題に対して物語を書き始めたり、初めて目にする文章に続きをつけたりする作業は楽ではありません。そんな中、四人がうまくバトンを繋ぎ、ちょっぴり幸せ感の漂う物語を作ってくれました。
「ホッカイロで温まらない奥の方が温められた。」という一文には他の多くの生徒が感心していたこともつけ加えておきます。
当塾に来たばかりの頃には、すぐに「書くことがありません!」「何を書いて良いかわかりません!」なんて言っていた生徒たちが、いつの間にか、どんな無茶振りにも対応して、短い時間でなんとか物語にしてしまう力がついたことをうれしく思います。みんな良く成長してくれました。さすが中学3年生!

塾長






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2018年12月20日

小さな奇跡の宅配便

KOTARO.Y(高2)

仕事終わり

今年も、雪は降らない。冷たい夜の風が、頬に当たったまま離れない。何度この日を一人で過ごしただろうか。
イルミネーションに飾られたビルの間を抜ける。
お決まりの恋人たちの歌は、風と共に流れカップルの景色に溶け込んだ。「お前らの宗教なんだよ」毎年思う言葉も、段々軽くなって薄明かるい月に向かって飛んでいった。
意味もなく、甘い香りに誘われてケーキ屋さんに入る。誰と競っているわけでもないのに、何か負けたくなくて、ケーキを二つ買った。
誰と食べるわけでもないのに…。
マンションの前まで来て、マンションを見上げた。いつもと何ら変わりないのに、電気の点いていない僕の部屋を見て、少し悲しくなった。腕時計は、九時五十五分を指していた。
こんなときに限って、エレベーターは最上階に停まっていた。
ついてねーな。
やっと降りてきたエレベーターに乗り込むと、女の人が走り込んできた。
「すいません」
そう言って、乗り込んできた彼女は少し疲れている様子だった。まだ若く同い年位の彼女は、確か同じ階の人だったと思う。
この人も、誰かとご飯でも行ってきたのかな。
不意にそんなことを考えた。
「今日寒いですね」
突然彼女は話しかけてきた。
「そうですね。昼間はちょうどいい気温だったんですけどね」
「そうなんですよね。お昼食べに外に出たときは寒くなかったんですけどね」
彼女は、そう言ってなんだか少し嬉しそうに笑った。
「ケーキ誰かと食べるんですか?」
別に普段なら何でもない質問に少し虚しさを感じた。
「いや、一人で食べますよ」
「あっ、そうなんですか」
少し気まずい空気になって、二人とも黙ってしまった。十階についてドアが開く。黙ったまま廊下を歩いて、部屋の前に着いた。
「じゃあ、また…。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
彼女は、そのまままっすぐ歩いて角の部屋に入って行った。何となく二人とも会釈を交わした。スーツをハンガーにかけて、シャツもズボンもそのままでソファーに座り、テレビを点けた。どの番組もクリスマス特番ばかりだ。何も食べる気にならず、冷凍パスタをチンして食べた。
ピンポーン、インターホンが鳴り、現実に引き戻される。
こんな時間に誰だ?
エレベーターの彼女がドアの前に立っていた。不思議に思いながらドアを開ける。
「どうしたんですか?」
当然の疑問だった。彼女はたまに朝会うだけの人だったから。
「あの、お一人だって聞いたので、私も一人なので一緒にお酒呑みませんか?」
彼女はワインを持ってそう言ってきた。一瞬戸惑ったが、
不思議なクリスマスだな。
と思いながら言った。
「どうぞ、上がってください」
「おじゃまします」
リビングに入ると、カーテンには、ソリの影が映っていた。


高校生

バイトが終わった夜の七時。家に帰る住宅街を歩く。学校では、クリスマスにどこに行こうかと、カップルが話し合っていた。男子も何人かで、遊びに行く計画を立てているようだった。俺は、シフトを頼まれて断りきれずに、バイトすることになってしまった。
今日の、コンビニには、幸せそうな人が多いように感じた。多分いつもと、変わりないんだろうけど。
少し寂しい、クリスマスソングを聞きながら、暗い住宅街を家に向かって歩く。少し大きなため息がこぼれた。
(今年は、一人か…。)
毎年クリスマスは、隣の家の歩美(あゆみ)の家族と過ごしていた。だけど、今年は違う。一週間ほど前にたまたま、廊下で歩美が学校で友達に、クリスマスに遊びに行こうと、誘われているのを聞いてしまった。何やらクラスの格好いい男子も来るらしい。
別に、何も思っていないが、無意識にその場から逃げてしまった。小さい頃からずっと二人で一緒に過ごしてきたクリスマス…。
放課後の部活には全然集中できず。練習にも遅刻してしまい、キャプテンに怒られてしまった。今日は1日中何に対しても身が入らなかった。そんな中、悲劇が起こった。
試合形式の練習中、審判をしていると、突然ボールが飛んできて顔面に当たり、気がつくと保健室で寝ていた。
目を覚ますと。隣には本を読みながら歩美が座っていた。
「あっ、起きた。大丈夫?」
「別に何ともない」
「ボールに当たるとかダメダメだなー」
普段なら何でもないことなのに、何故かイラついた。
「うるさいな」
「なにその言い方、心配してんのに」
「ハイハイ」
仕切りのカーテンを開けて、外に出た。すぐにでも保健室から立ち去りたくて、少し早足になった。
去り際に、嫌味っぽく言った。
「今年のクリスマスは、クラスの子と楽しく遊ぶんだろ。楽しみだね」
保健室から出るとそのまま走り去った。
「そんなの誰から聞いたのー」
去っていく背中に、歩美の声が聞こえた。

そんなこんなで、なるべく歩美と会わないようにして、クリスマスの日を迎えた。バイトを変わったのは後から考えると、良かったかもしれないと思った。
澄んだ冷気が、顔の周りを撫でる。ため息をつくと、ついた分だけ白く夜空に浮かんだ。
家への帰り道、いつもよりため息が多いような気がした。
歩美がいないクリスマスは、初めてで不安があった。今後は、ずっと一人で過ごすのだろうか。
家に着くと、歩美の家の電気は消えていた。
(歩美のお父さんも、お母さんも二人でどこかに行ってるのかな)
ドアの鍵を開けて、手をかける。大きなため息が自然と出た。
「ただいま」
脱力したようにドアにもたれかけながらそう言った。
「お帰り」
歩美の声が聞こえる。(幻聴か…。)そう思って、無視すると、
「お帰り!」
さっきよりも、強く声が聞こえる。顔を上げると、歩美がそこにいた。
「何で、いるの。クラスの子と遊びに行ったんじゃないの?」
「誰もそんなこと言ってないけど」
安心でため息が出た。歩美はすぐにリビングに戻って行ってしまった。
玄関から入った月の光の中に、少し大きなソリの影が通った。


子ども

小さな体をピョコピョコ動かして、無駄に動き回りながら一人で家に帰る。今日は友達が皆インフルエンザで、一緒に帰る人がいない。
石を蹴っ飛ばして、転がしても蹴り返す友達はいない。学級閉鎖は全然楽しくない。石を蹴りながら歩いて行くと、石はコロコロと転がって、曲がり角に消えていった。
別にルールはないけど、なんとなく家まであの石を蹴りたい気分だった。
のそのそとゆっくり歩いて曲がり角に差し掛かると、さっきの石が角から飛び出して来た。
驚いて、後退りする。
(えっ、何で戻って来たの…。)
奇妙な石に少しずつ近づいて行く。しゃがんで石を眺める。特に変わった所は無さそうだった。
恐る恐る石を触ろうとしたとき、突然声をかけられた。
「なにしてるの?」
声に驚いて思わず尻餅をついてしまった。見上げると声の方向には、雪のような白い肌の女の子が立っていた。
「お前こそなにしてんだよ。てか誰だよ。」
驚いたカッコ悪い所を見られて、言葉が少しきつくなっていた。彼女は僕を見下ろしながら言った。
「そんな、ビビりに言う事なんてないわ。」
(ムカつくやつだな。)
すぐに立ち上がって。指を指して言った。
「勝負しろ」
彼女は、ポカンと口を開けて呆れていた。
「男子って、そういうの好きだよね。馬鹿じゃないの」
冷たく彼女はそう言い放った。
「馬鹿ってなんだよ。あっ、さては負けるのが怖いんだろ」
「そんなわけ無いじゃない。何で勝負するの?」
「よし、交渉成立だな」
自信満々で挑んだ勝負。
じゃんけんから始まり、手押し相撲、指相撲、しりとり、お絵描き…。合計十種目で戦った。戦績は十敗で一回も勝てなかった。
(まっ、負けた。)
どや顔で僕を見下ろす彼女に向かって、
「バーカ、 バーカ。ちょっと凄いからって調子のんな!」
そう言って、家に向かって走った。女の子は少し寂しそうな面持ちで、とぼとぼと歩いて行った。
夜ご飯を食べ終え、一人でゲームをしながらケーキを食べていると。突然インターホンが鳴った。
「拓海、出てー」
キッチンから、お母さんの声が聞こえた。ゲームを中断して、玄関に向かう。扉を開けて目の前を見ると、昼間の女の子が立っていた。
「あ」
二人とも同時に言った。女の子の背中には、小さなソリの影が映っていた。


サンタ

一年に一度のこの日、俺は大忙しだ。前日の夜中から準備をして、日付変更線を駆使して全世界に幸せを届ける。キリスト教とか関係なしに、全世界を回る。キリストの奴が幸せを配りたいから手伝えなんて言ってきたから、こんなことになってしまっている。
トナカイを従えて、夜空を飛んでいく。
今年は、約七十億人に幸せを配らなければいけない。全く、何が少子化だよ。
多くの人が勘違いしているのだが、俺は別にプレゼントを配ってる訳ではない。
小さな幸せ、小さな奇跡を起こしているだけだ。プレゼントは、親とか恋人から貰ってくれ。
七十億人もいたら奇跡は小さくなってしまうから。最近はあまり気付かれない。
せっかく配り回ってるんだから気付いて欲しいと思ってる。
面倒くさいけどまあ、当分この仕事を続けて行くつもりだ。
今日は一段と月が綺麗な気がする。
ヤバい、月明かりに照らせれるとバレちまう。

サンタは勢いよく雲の影に向かって飛んでいった。


十二月二十五日には、あなたに小さな奇跡が届きます。是非奇跡を見逃さないように、穏やかな気持ちで待っていて下さい。
ちなみに、当日の時間指定は承っていませんので、ご了承下さい。




最近のKOTARO君の作品には、幸せまでにもう一歩というところにいる登場人物が多いのです。
そしてそれがどれも、ちょっといじらしく、可愛らしく、それらがそのまま作品の魅力になっています。
そんな風に感じるのは、彼らの物事に対する感じ方や、ちょっとした行動パターンに共感できるところが多いからでしょうか。
今回も、格好つけてケーキを二個買ってみたり、何も確かめずに勝手に焼きもちを焼いては幼馴染にイラついたり、驚いたカッコ悪い所を見られて言葉が少しきつくなったり…読んでいて、幼い頃、若い頃の自分の内面を見られているような気分にもなりました。(別に同じことをしたと言っているわけではありませんが。)

また、サンタさんの仕事は「プレゼントを配ることではなく、小さな奇跡を70億人分も起こすこと」という発想も素敵でした。大人にもサンタが来るのかもしれないと思っただけで、僕はほっこりさせてもらいました。大人になってから久しく、自分にサンタさんから何かが届くなどと思ったことはありませんでしたから。
ひょっとしたら、この作品を読んでそんな気持ちになれたことが、すでに小さな奇跡のプレゼントなのかもしれませんね。
この作品を読んでくださった方の多くに、小さくても素敵な奇跡が起こりますように!

塾長




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2018年11月24日

僕にとって美しいものとは

KOTARO.M(中3)

 僕は、外を歩きながら今日のテーマ「美しいもの」を探していた。しかし僕は美しいと感じたことがほとんどないのだ。だから今回のテーマは僕にとってものすごく難しいことなのだ。

 美しいものとは何だろうと考えながら歩いていた。美しいものがどれなのかは見たら分かるが、その美しいものを見て大人みたいには感動できないのだ。感動をしていないということはまだ自分の人生の中で本当に美しいものと出会ったことがないのだと思う。それかまだ長く生きていないからだ。なぜ歳をとると美しく感じるかは、僕が大きくなってから分かることだから今知る必要はないと思う。このように僕は美しいからといって感動するというわけではないのだ。

 こんなことを考えながら歩いていたが、美しいものをまだ見つけられていなかった。僕は今までの人生で一番美しかったものとは何だろうと必死に思い出そうとしていた。すると、頭の中で一つだけ見つけることができた。それは坂本龍一というピアニストだ。僕はこの人の曲を聴いた時、心が落ち着き美しいと感じた記憶があった。坂本龍一の作る美しい音楽は世界でも感動を与えているのだ。僕も美しいものを作り上げ人々に感動を与えたいと思った。




「あなたにとって美しいものとは何ですか」というテーマについて考えながら、クリスマス前のキラキラした自由が丘の街を歩きました。

記憶の中まで探してようやく見つけた美しいものは、目に見えない形のないものだったということに、少し感動してしまいました。文中でKOTARO君は美しいものに感動することはないと書いていますが、坂本龍一さんの音楽の中に美しさを感じたなんて、むしろ感受性が豊かなのだと思います。どちらかといえば、美しいと感じる基準が高く、ちょっとキラキラしているくらいではKOTARO君のお眼鏡にかなわないということなのかもしれません。
KOTARO君は美しさを感じた時、「心が落ち着き美しいと感じた」と書いています。そういう心の動きこそがKOTARO君にとっての「美しい」なのでしょう。まさに感動できている状態だと思いますが、それを実感するのは、確かにもっと大人になってからかもしれませんね。
難しいと感じながらも、テーマと向き合い、自分と向き合うことで答えを見つけてくれた今回のKOTARO君の作文は、僕にはとても美しいものに感じられました。

塾長




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2018年11月16日

野菜スープ

Chiaki(小6)

 今日の夜ご飯は野菜スープ。どんな味かな?私達は北軽井沢にキャンプにきているのでとても簡単な料理だ。でも、とってもおいしいスープができると思う。なぜなら、野菜スープの中に入っている鳥肉を炭で焼いているからだ。ふつうのお肉でも、炭で焼くとすごくおいしく感じる。だから私はキャンプが大好き。今日の花(犬)のご飯はスペシャルだから花も楽しみにしていると思う。

 いよいよ夜ご飯。ママがおなべのふたを開けると、トマトの匂いがしてきた。するとパパが、
「はずれた〜。」
 と言った。
「「えっ?何が?」」
 とママと私が声をそろえて言う。パパはスープの味が塩だと思っていたみたいだ。ママがよそってくれたスープを見ると、本当に野菜しか見えない。一口食べてみると…。
「おいしい〜。」
 野菜のだしが出ていてとってもおいしい。花もスペシャルディナーをおいしそうに食べている。横を見ると、パパがすごい勢いでスープを口に運んでいる。私もおかわりがなくならないうちにと思って食べ始めた。みんなすごい勢いで食べたので、スープはあっという間に無くなってしまった。
 最後はデザートにマシュマロを焼いた。暖炉の火がちょうどいい具合だったので、マシュマロがこんがりきつね色に焼けた。こげていないのに、中までとろとろでほっぺたがとけていくように感じた。

 今日は、この一週間で最高の夜ご飯だ。こういう夜ご飯がこれからたくさんあるといいなと思った。




家族との食事シーンを、自分以外の家族の描写を含めて書くと言う課題に対して書いてくれた作文です。日頃は宿題は出さないのですが、欠席の週に何か家庭で書ける課題をと言うことでお願いしました。

まず野菜スープが美味しい理由を「肉を炭で焼いているから」と具体的に書いているのが効果的です。ただ美味しいと書かれるより説得力がありますし、読みながら味を想像してしまいました。こうなれば読者が作文に書かれた世界に入っていくのは簡単なことです。野菜スープの味を予想したり、すごい勢いでスープを口に運んだりと、心から食事を楽しんでいるお父さんの様子を読んでいるだけで、ご家族の仲の良い雰囲気が十分に伝わってきます。お母さんの野菜スープ同様に原稿用紙二枚の中に旨味がたっぷり詰まった素敵な作文で、読んでいて幸せな気分になれました。

塾長


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2018年10月26日

今を生きる

YUKI(中3)

 自分は窓を正面に座っていた。
 窓には自分の体と原稿用紙、少し減ったコーヒーが映っている。今日の自分の服は黒をメインとした色が多く、よく見ないと腕より下が見えない。それほど、外はまだライトで明るい。

”自由が丘の駅前は暗くなることはあるのだろうか”

そんなことを思いながらコーヒーを飲んだ。
 外はいつもと変わらず少し騒がしそうに見えた。そう見えただけだ。音は聞こえない。もしかしたら外のパトカーはパトロール帰りではなく不審者の追跡をしていたかも知れないし、駅では何か事件が起きているかも知れない。そんな光景が想像できる。人が死に、辺りには濃い錆の臭いがある。周りの人間が殺されてゆき遂には自分も

「ガラッ。」

 と、コーヒーの氷同士がぶつかり音がした。自分は空想の世界から戻ってきた。

 今の日本は他の国と比べると良い方だと思う。身近に大きな争いはなく、今すぐに攻撃をしてくるようなことはないだろう。しかし、小さな争いが大きな争いへと変わり、日本全国、世界規模まで発展することだってある。この生活も明日には終わりを告げるかも知れない。だから今、この瞬間を大切に生きよう。僕は思う。





 電車の駅前が見下ろせるカフェの窓際の席に一人で座り、自由に感じたことを書いてもらった作文です。

 窓に映った自分の姿の描写に始まり、そこから外へと視線を移し、さらにそれに合わせるように主人公の思考も外の世界へと移っていきます。この時、読者の思考も内から外へと自然に移行していきます。よく計算された上で書かれた文章なのでしょう。ここは読んでいて楽しかったです。
 空想の中では身近に潜む危険への不安が語られます。そしてこの不穏な想像世界の話はどこまで行ってしまうのだろうと思ったところで、それを断ち切るかのような「ガラッ。」という氷の音。たった一つの音で、YUKI君は主人公と読者を現実世界へと引き戻してしまいます。何かが変わる瞬間というのは必ずあるわけですが、それを文章で書くのは難しいものです。その境目は目に見えるとは限らないからです。しかし、それがここでは実に上手く書かれていました。タイミングも音の選択もとても効果的で見事な一行でした。一行の重さや大切さを考えさせてくれる作品でした。素晴らしい!

塾長


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2018年09月28日

秋のおとずれ

KOHAKU(中3)

 「ビュッ。」
 ドアを開けると、ムアッとした夏の暑さと共に、秋らしい涼しい風も少し吹いてきた。
 しばらく歩くと熊野神社についた。夏の初めにRIOと遊んだシーソーが寂しそうに置いてあった。草むら辺りからコオロギが
「リリリリリン。」
 と、静かに鳴いていた。セミと違って、美しい音色で秋のおとずれを教えていた。

 神社を出て道路に出ると、カーディガンを着た女の人が歩いていた。夏とは違って街を歩く人みんな、少しずつ厚着になっていた。私はまだ夏みたいな洋服。タンクトップに短パン。風が秋っぽくなってきただけで、体はそれで調度いい。
 マックでおやつを買ってもらった。いつも暑かったらアイスを買うが、めずらしくシャカチキを買ってもらった。温かくて、久しぶりに食べたからすごくおいしく感じた。先生が選んだポテトも、あったかいのが合っていた。  
 やっぱり秋になってきているみたいだ。私は少しばかりそう思った。九月に入ったらもっとコオロギの綺麗な音色も聞こえてきて、街行く人々の服装も長袖になってくるのかな。





8月の終わりに、秋の気配を探しに散歩に出た時の作文です。

「夏の初めにRIOと遊んだシーソーが寂しそうに置いてあった。」は季節の描写とは直接関係はありませんが、いなくなった友達を思い寂しく感じる気持ちと、日本人が感じる秋の少し寂しい雰囲気が上手く繋がって、季節感を浮き上がらせています。その雰囲気はそのままコオロギが鳴いている描写まで続き、前半部分は秋の気配を探すと言う課題にぴったりの、少し静けさがあり、しっとりとした美しい文章となりました。
 後半は対照的に少し元気な感じを出して、周囲に秋っぽさは見つけつつも、自分の中ではまだまだ夏も続いているよ、と言う正直な気持ちが感じられます。この辺りの描写は、季節感とともに主人公の明るく元気なキャラクターも読み取れて、文章の中にKOHAKUさんらしさを感じることができました。

 ちょうど季節が動き始める頃の、夏と秋が同居している街の様子を、上手に書き分けてくれました。

塾長



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2018年09月21日

川遊び

KOKORO(小6)

 「あっカエル。」
 そのカエルは、茶色で六センチメートルくらいだ。ピョンッ。カエルはすぐに青々としたしげみの中にかくれてしまった。しげみはひざくらいまであり、蚊もたくさんいた。
「やめよ。」
 と言って私はしげみに入るのをやめた。その時に二センチメートルくらいのカエルが二匹出てきた。また、茶色だ。私は、ゆっくり近づいて行った。カエルの後ろまで行くと、親指と中指でつまんだ。そして頭を人差し指で抑えて飛びはねないようにしながら取った。もう一匹も同じように取った。捕まえた二匹ともかごの中に入れた。
 妹たちも魚を捕まえたらしく、私の方まで来て、見せてくれた。
「ふうん、小さいね。」
 と言うと、
「でも、すごいでしょ。」
 と言ってきた。妹が取れるのも当たり前。あみを持っていたから。適当にやっていても捕まえられる。
「あ〜そうですね。すごいですね。」
 私はうんざりしたので適当に返すと、
「ここは、何捕まえたのよ。」
 とムッとした口調で言われた。
「カエルだけ。もっと捕まえたいんだからあっち行ってて。」
 と言っても、なかなか動く様子がない。一回上がることにした。その時。ピョンピョン。見てみると、カエルがたくさんいた。湿っているところが好きなカエルたちは、木の下にたくさんいる。五、六匹捕まえた。その中にあの六センチメートルのカエルもいた。
 「ここ〜ちょっと来て。」
 と私を呼ぶ父の声がした。
「は〜い。なあに。」
 と言うと、
「上流の方行くって。」
 母が言った。でも声が聞こえてくる方は、私がいるところより下流だ。
「早く〜。」
 弟の声だ。
「はいよ。今行く。」
 川に入り、声のする方へ行った。もう一つ分かれ道があり、私はゴツゴツした岩がたくさんある方へ行こうとしていた。
「え〜そんなとこ行くの。けがしそう。」
 予想通りけがをした。それは私だ。くつが流されそうになり、取ろうととしたら突き指。川の水で冷やしていられたのであまり痛くなかったけれど。

 「そろそろ帰るよ。」
 母がのんびりした口調で言ってきた。
「カエル逃してなかった。」
 と言って私は虫かごを開けた。カエルを逃がすと妹がそのカエルを捕まえて、水に落とした。私は大きいやつを地面に置いた。ピョンピョンとカエルは元気にとびはねて行った。




 夏休みの出来とごとについて書いてもらいました。

 家族で過ごす休日の作文というと、ややもするとただ楽しいばかりの作文になりがちです。でも、この作文の中で印象的なのは、姉妹のちょっとしたライバル心や、少六の女の子だからこその少しピリピリした空気感でした。姉妹二人の会話はどこの兄弟や姉妹にもありそうなもので、二人の関係性が上手に描かれていてリアルです。その一方でカエルを見つけた場所やその捕まえ方など、実際に経験したからこそかける情報が多く、自然に対する生き生きとした描写が多く見られました。逃したカエルが最後にピョンピョンと元気に去って行く描写からは、自然に対する筆者の愛情も感じられます。
 ところで本人に聞くと、姉妹の関係性にしても自然に対する考え方にしても、そこまで狙って書いてはいるわけではないとのこと。でも無意識だとしても、これらを入れられたことにはセンスの良さを感じました。
 KOKOROさんは書き始めて5ヶ月ほど。まだあまり多くを求めるのは酷な時期ですが、この作文は、今のKOKOROさんらしさが滲み出ていて、素敵な一編になりました。

塾長
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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。