2017年08月15日

負けたくない!

YURIKA(中2)

 次の競技は、二年学年種目のいかだ流しだ。
 いかだ流しとは、馬とびの姿勢でずらーっと並んだ人の上を人が走る。もちろん上の人、船頭を支える人もいるが、とても危険な競技なのだ。

 私達の番は次なので、待機ゾーンに並ぶ。体育大会リーダーの私はクラスのみんなを並べて、座らせ、人数確認をした。並べるだけなのに驚くほど緊張する。私はこの中で一番緊張している自信がある。なぜなら、私はこのいかだ流しのキーパーソン、船頭なのだ。船頭は男女一人ずついる。男子の船頭の人も私と同じくらい緊張してるのかな。

 今競技中の一年生は、ハードル走をしている。もうすぐ終わってしまう。
「ああ、終わってほしくないな。」
 ふと、そう思ってしまった。
 失敗したら、落ちてしまったら、どうしよう。という気持ちでいっぱいだった。鼓動が早くなる。予行練習で私に勝った女の子、そして他にあと二人。どうしても一位をとりたい。

「次は二年生の学年種目、いかだ流しです。」
 色々考えているうちに、もう競技が始まってしまう。どうしよう、と不安に思う気持ちと緊張でめまいがした。
 一回戦は男子だ。予行練習で一位だったから、いけると思った。だけど、結果は二位だった。すごく焦った。なぜなら、一位だった男子は予行練習で一位だった女子がいる組なのだ。

 女子の番。みんなが並び直す。みんな、どんな気持ちなのかなと考えた。前にずらーっと並んだクラスメイトが成す馬が、いとおしく見えた。
「百合花頑張れー!」
 先輩たちの声が聞こえる。スタート地点で後ろを向いて笑おうと思った。だけど首が動かない。
「ヨーイ…。」
 支えの人の腕をにぎる。にぎり返してくれた。
「スタート!」
 周りから応援の声がする。とび石の上をとぶように走る。カーブ寸前で、落ちてしまった。
(どうしよう、どうしよう…。)
 と考えていたら、うまく馬に乗れない。まずい。隣のクラスの人の流れが早い。なんとか立ち直り、とにかく走る。多分今ビリだ。どうしよう…。そう思った途端、練習した時のことを思い出す。暑い中、たくさん練習して、先輩達からアドバイスをもらって、洗い立ての真っ白な体操服を茶色く汚してまでして、きっとみんな踏まれて痛い思いをしたのに。もう、何も考えず、ダッシュする。自分でも驚くスピードだった。走っても、走ってもゴールが見えない。長い。
(早く終わりたい…。)
最後の馬について、飛び降りる。
「キャーーーーーーー!」
 みんなが叫んだ。
 一位だった。嬉しくてたまらなった。みんなで抱き合い、この上なく喜んだ。温かい雫がほおを伝わった。



 勝ちたい気持ちと不安がせめぎ合う主人公の心模様がまっすぐに書かれていて、読んでいるこちらにも緊張が伝わってきます。中でも、声援に応えようと振り返って笑おうとしたのに緊張のあまり首が動かなかったり、仲間が手を握り返してくれたりと、気持ちと連動した動作やしぐさを書くことで、気持ちを表現しているのはとても上手でした。
 個人的に好きなのは「前にずらーっと並んだクラスメイトが成す馬が、いとおしく見えた。」の一文です。仲間を思う気持ちが伝わってきて、ぐっときます。
 また、競技直前から競技中そしてゴールまで、張り詰めた空気が続き、最後の最後にようやく気持ちが解放される様子には、僕自身がはるか昔にスポーツをやった時の空気を思い出させられました。スポーツで必死になれることは大人になるとめったにあることではなく、今しか書けない瞬間を作文に残せたのはとても良かったですね。直球勝負のタイトルも印象的でした。

塾長


posted by 塾長 at 23:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。