2019年04月27日

カメレオン。

YUKA(高3)

僕はカメレオン。どんなものにもなれるよ。
ミュージシャンにだって、アイドルにだって、平凡なOLにだって、厳しい部長にだって、きっときっと、総理大臣にもなれる。
僕にはみんなの気持ちがわかる。想像できるんだ。その人を知って、どんな生活をしてるのかを知って、その気持ちを深く考えてみる。そうすれば、僕もその人になった気になって、いつしかそれが本当の自分だと錯覚し始めるんだ。でもね、また別のものが来たら、さっきのとはまた別物になっているんだ。そうして気付くんだ。本当の色を自分は知らないって。どれが本当の自分?みんな自分を持ってるよ?みんなはコンプレックスも、お気に入りも持っている。それを幸か不幸かというかはその人次第だ。でもね、コンプレックスもお気に入りに変えてる人達だっているんだ。じゃあ僕のコンプレックスはなんだろう?お気に入りはなんだろう?探してみよう!そうして見つかったのは、僕には何も色がないってこと。透明なカメレオンだってこと。この世界は平等を歌った嘘つきだ。平等なんて嘘つき。僕には個性なんてものはない。誰かの色を借りることしかできない。ああ、この世の全ての色が全て流れてくれればいいのに。そうすればみんな透明になるのに。そんな心から思ってもないことを言ってみたくなるほどに自分を見たくない。僕は僕と会いたくない。

ある日、あひるの彼がやってきた。そして僕に言ったんだ。「君だけは色を重ねることができるだろう?」って。
「でも全ての色を混ぜたら黒になってしまうよ?全ての色を掻き消してしまうじゃないか。」僕は不安になった。
「混ぜるんじゃない。君は今まで何度もいろんな色を上から重ねてきただろう?まだ君の中には何層ものいろんな色があるんだ。それは君が今まで大切にしてきたものさ。」
そして、僕は僕の尻尾の先を少しだけ、ほんの少しだけ切ってみたんだ。そしたらね……誰よりも沢山の色を持っていたよ。そう、僕はカメレオン。カメレオンなんだ。ねえ、君の色は何?








YUKAさんの文章を読むと、毎回新しいYUKAさんの本当の部分を少しだけ分けてもらったような気分になります。彼女が登場人物に話させる言葉は人の心の不安や弱さや、あまり日頃はペラペラとお話ししない部分まで踏み込んでくるからです。他人への憧れ、人の真似をすることの限界、コンプレックス等、多くの感情がこの作品の中でも描かれています。もちろんフィクションの形を取っているので、他の誰かを投影しているのかもしれないですが、僕にはYUKAさんの様々な要素が文章になって溢れ出てきているように思えるのです。今回の「カメレオン。」は実はYUKAさんが当塾を卒業する日にメールで送ってくれたものです。YUKAさんを送り出し、僕は帰宅途中の電車の中で読みました。電車に揺られながら静かに感動し、嬉しい気持ちに包まれたのを覚えています。何にでもなれるけど、まだ自分が何者か分からず不安になるカメレオンが、悩んだ末、最後には自分の良さを知り、それを自分自身で認めることができたからです。そしてYUKAさん自身がカメレオンだとしたら、教室での日々を通して、同じような感覚を持ってくれたのかもしれないと思えたからです。今でもこの作品を読むと、少し心が温かくなります。

塾長




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プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。