2017年07月27日

「カレーうどんが好き……だけど?」、「すぐそばの脅威」(2作連作)

HANA.Y(中2) 

「カレーうどんが好き……だけど?」

 私は汚れたものが嫌いだ。
 服についたシミなんてこの世で一番許せない。本の背表紙の部分が白く擦れてしまったり、ページが折れてしまったり何てことがあったら失神してしまう。
 だから、本には必ずカバーをつけるし、袋に入れたり、硬いケースの中に身動きがとれないようにわざわざ違う本を入れたりして、ケースの中にみっちみっちになるようにしている。
 ノートに気に入らない自分の字が並ぶのも嫌だ。そういう場合は、そのページを破りもう一度書き直す。なんで鉛筆で書かなかったのかと姉に言われ、ページを破る必要はないと最近、気づいたところである。

 私がいつからそんなに汚れが嫌いになったのかは分からない。いつの間にかというのが、一番最適な言葉だがいつからかと聞かれれば、確かそれは母のためだった。
 私には家族が多く、母の負担が多いことは小さい頃からわかっていた。私がシミを作ってしまっては、母の仕事をまた一つ増やしてしまうと思ったのだと思う。それから、初めて綺麗にシミを消したときの快感が今に繋がっているのだと思う。

 私はカレーうどんが好きだが、シミが嫌い。まさに対極の両方をバランスよくするために私はシミと戦う決意をした。
 家庭科の教科書を片っ端から読み、薬局ではシミ抜きのコーナーを見る。シミがあったら率先して取る!取る!そして、シミと互角に戦っているのだ。
 かくれんぼと同じだ。シミを一つ残らず見つけて最後の一つまで見つける。跡形もないように。

 今ではシミ抜きは私の得意種目。運動会の障害物があったら、余裕の一位、間違えなし。
友達に、なりたい職業はクリーニング屋か?と聞かれたことがある。私は、クリーニング屋は仕事であって、私はシミ抜きだけがしたいのだと答えた。友達の、私を不審な奴だというような目つきは、今でも忘れはしない
 そんな、服のシミが本になり、ノートになった。でも、これは誰しもが持っていなければいけない思いではないか?
 例えば気になっている人に偶然出会ったとき、コンビニに行くような部屋着でしかもシミが派手についていたり、白い服にシミがついていたりして、自分ではなくなりたりたいと思ったことはないか?
 そんなとき部屋着でも綺麗な部屋着で白い服が優雅に揺れていたら相手側は気分がいい。
 家に帰ってきて、部屋に入った時白くはげている本が陳列しているより、本屋で売っているような状態で美しいままの方が気分はいい。
 ノートはだるい授業できったない字が暇そうに並んでいるより、だるい授業だからこそ楽しみになるような美しい字が和気あいあいと並んでいる方が、気分がいい。
 姉がボロボロな本を持っていて、汚れていて嫌ではないのか?と聞いたことがある。
すると姉は澄ました顔をして
「汚れるっていうのも味があるってことじゃん。」
 チョコを使ったお菓子を作るというのに白い服を着て大量にチョコを飛ばすというのも味なのか?と問いかけたくなったが私は美しい状態が好きなのだ。
 私の今の課題はシミを抜いた後の毛羽立ちをどうするかである。



「すぐそばの脅威」

 私のシミ嫌いは筆箱にも及んだ。
 ある日、買ったばかりの可愛らしい筆箱の先に鉛筆の黒い跡がついているのを見た。取ろうと試みたがなかなか取れない。これは、まだ幼い頃の私の短い人生の屈辱的な経験だった。それはどんな筆箱でも同じで、最初は美しい状態でもだんだん黒い跡がつき、下の方に消しカスがたまっていくことが憂鬱になり見ているだけでも嫌で何度も筆箱を変えた。それが筆箱の運命なのだとあきらめていた。
 そんな時、友達の誕生日プレゼントを見ていた時だ。ホットドッグの形をした筆箱を見つけ、一目で気に入ったのですぐに購入した。帰って早速シャーペンを入れようとした時、ふと気づいた。これもいつか汚れてしまうのか?と。そのような事態は避けたかった。だから、私はその筆箱にキレイな柄のキッチンペーパーを入れ、シャーペンなどの筆記用具をそのキッチンペーパーにキレイに包んだ。最初は友達からキッチンペーパーがソースのように見えてかわいいと言われたがだんだんとボロボロになり始めた。それでは、鉛筆や色ペンからの脅威からは守れていないと思い断念した。キッチンペーパーをいちいち変えるという手間が増えただけだった。
 新たな転機が訪れたのはまた新しい筆箱になった時だ。誕生日プレゼントで姉がくれた動物の形をした筆箱だった。姉がわざわざ、北海道から取り寄せたものだった。以前のパターンで汚れから守ろうとキッチンを探すがキッチンペーパーが見当たらない。そこにちょうどあったハートの柄のついた袋を見て、その袋の中に入れることを思いついた。これが最善の策であった。
 今ではシャーペンは袋に入れ、ボールペンや色ペンはついてしまったとしても拭き取れる硬いビニールの筆箱に入れて、筆記用具の脅威から守っている
 最近、友達の筆箱にマーカーのインクのこぼれた跡を見つけた。とても見るに堪えない今日この頃である。





 この作文は、「何か自分の得意なこと、好きなことにこだわった話題を見つけて、自由に書く。」という課題に対するものです。てっきり、趣味や得意なスポーツなどについて書かれるものかと思っていたところ、良い意味で大きく予想を裏切る作文となりました。
 ここまで本人の強いこだわりや思いが書かれていれば、もう作文力を上げるための練習というよりは、エッセイとして楽しむことができます。授業でこの作文を読んだ他の生徒たちの間では、作文の書き方よりも、その内容に対する賛否両論が飛び交い、授業が終わってからも、汚れや整理整頓、はたまた人生感についてまで、長く会話が続きました。読む人たちの会話がそれほど盛り上がるというところにも、この文章の面白さがあらわれていると感じました。
 気取ることも、自分を飾ることもないストレートな思いを綴った文章は魅力的ですね。

by 塾長
posted by 塾長 at 12:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 作文紹介
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。