2018年12月21日

クリスマスプレゼント

RISA(中1)

 クリスマスイヴの夜、街は綺麗にライトアップされ、店頭にはプレゼントが並ぶ。
「クリスマスなんて嫌いだ…。」
 私は、街を歩きながらそっと呟く。
 私の両親は、私が幼い頃に死んでしまい、私は親戚の間をたらい回しにされていた。理由は簡単、
「ちっとも笑わない。」
 私はほとんど無表情で生活している。そのせいか、周りからは楽しくないのかと思われて、少し距離をおかれている。
 私自身も一人でいる方が楽しいし、周りも私がいない方がいいと思う。

 私は、今年の四月から新しい家に住んでいる。今まで、クリスマスプレゼントをもらっても喜ばなかった私は、この時期が嫌になる。なぜなら、心配されないよう、無理矢理にでも笑わないといけないからだ。
 普段、無表情の私が笑おうと頑張っても、周りには笑っているようには見えないらしい。それに、
「何が欲しい?」
 と聞かれても、
「何でもいいです。」
 と答えるのが、毎年クリスマスの前に行われる会話だ。今年は、何も聞かれなかったから、プレゼントはきっとないのだろう。少し残念にも思いながら、家への帰り道を急ぐ。

「ただいま。」
 家のドアを開けると、小さな声で言う。この家に来てからもう八ヶ月にもなるが全く慣れることができない。
「あら、おかえりなさい。」
 奥から、この家の持ち主である塔子さんが出て来て、私にそう言う。
「寒かったでしょう。早く中で温まって。それと、ご飯できているわよ。」
 塔子さんは私に優しく笑いながら言ってくれる。
「はい…ありがとうございます。」
 私は少し笑ったつもりで言ったが、塔子さんが少し残念そうな顔をしているので、また無表情だったのだろうと思う。
 リビングに入ると、塔子さんの夫である清さんが新聞を読んでいた。
「おかえり、外は寒くなかったかい?」
 清さんも塔子さんと同じように笑いながら言ってくれるが、私は、また無表情のまま
「大丈夫でした。」
 と言う。
 テーブルの上にチキンなどが置いてある。クリスマスイヴだからだろう。
 三人で、夕飯を食べていたが、塔子さんと清さんが話しているだけで、私は全く話さない。いつもの夕飯が終わり、いつものようにお風呂に入り、いつものように寝る。いつもの行動を行い、私は眠りについた。

 真夜中に、物音がして目が覚めた。うっすらと目を開けると、塔子さんがプレゼントを置いているのが分かった。
「なんだ、塔子さんか。」
 そう思い、もう一度眠りにつこうとする。すると、塔子さんが私の近くに来て、私の頭を優しく撫でた。
「おやすみなさい。」
 小さな声で言い、部屋から出て行った。
 私は、塔子さんの行動に驚き、眠りにつくことができなかった。そっと起きて、足元を見るとプレゼントが置いてあった。
 プレゼントを開けて見てみると、小さな腕時計だった。私はその腕時計が幼いころに母からもらったものととても似ていることが分かった。
「お母さん…。」
 私はそう呟き、自分が泣いているのが分かった。自分でも何故だか分からないが、きっとお母さんのことを思い出したのだろう。泣きながら笑った。今度はしっかりと笑えているような気がした。
「明日、塔子さんにお礼を言おう。今みたいにしっかりと笑って!」
 そう心に刻み、私は腕時計を胸に押し当てた。





クリスマスならではの優しい瞬間を描くために、RISAさんが用意したのは、孤独で頑なな心を持った少女の物語でした。その瞬間の直前、塔子さんがプレゼントを置いているのが分かった時には、読んでいる僕も「なんだ、塔子さんか。」と思いました。でも、次の塔子さんの行動を読んだ時にはちょっと危なかったです。家で一人で読んでいたら、ホロリとさせられていたかもしれません。この頃、歳をとったせいか涙もろい僕は、特に誰かが思いがけず見せる優しさに弱いのです。ちなみに、教室でこの作文を披露した際には、他の子どもたちは特にその場面で大きなリアクションはしていません。ひょっとしたら、大人になってからでないとグッとこないポイントなのでしょうか。だとすれば、なおのこと、ここを一番大切な場面として書いているRISAさんの想像力、理解力に感心します。きっと人の悲しみ、喜びが分かる人なのでしょう。
今回の作文はクリスマスをテーマに心温まる物語を書いてくださいと言うものでした。僕の心は間違いなく温まりました!また、これはフィクションだと分かっていながら、主人公の少女の幸せを祈らずには入られなくなるくらい、僕の心にはグッとくる作品でした。

塾長



posted by 塾長 at 15:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
プロフィール
名前:塾長
自由が丘で作文教室を運営。
小学生から高校生まで広い年齢層の子供たちとともに、書かされるのではなく、書きたくなる作文を目指して活動中。